Daichi report

現場にエネルギーを届ける

電動建機の可能性を広げる移動式給電の挑戦

電動建機の普及には、機械そのものの進化に加え、現場へ電気を届ける仕組みが不可欠だ。コマツはベルエナジー株式会社と連携し、移動式給電車「MESTA Gen」による給電実証を実施。本プロジェクトの主要メンバーの開発本部 車両第四開発センタの遠藤武士氏、石澤義崇氏、山本佳亮氏、澤田悠貴氏に話を聞いた。

住宅街や街中で期待される電動建機

住宅街での上下水道工事や道路工事、夜間工事、造園、公園整備など、人々の生活圏に近い現場では、エンジン音や排出ガス、排熱、振動への配慮が欠かせません。猛暑を避けて早朝や夜間に作業したくても、その時間帯ほど、騒音など周辺への影響が大きな課題となります。稼働時に排出ガスを出さず、エンジン由来の騒音や排熱、振動を抑えられる電動建機は、作業者の負担を軽減するとともに、周辺環境にも配慮した現場づくりにつながります。

(写真:人々の生活圏に近い現場で稼働する電動建機)

普及を阻む「現場の電源」

 こうした利点がありながらも、電動建機の普及は未だ途上にあります。大きな障壁となっているのが、現場で電源をどう確保するかという問題です。工期が長く、作業場所が固定された現場では仮設電源を設置できますが、半日から1日で終わる工事や、作業場所が移動する道路工事では現実的ではありません。エンジン発電機を使えば給電できますが、騒音や排出ガスが生じ、電動化の効果を十分に活かせません。電動建機の普及には給電方法を含めて考える必要がありました。

電気のほうから建機へ

 そこでコマツが着目したのが、ベルエナジーの移動式給電車「MESTA Gen」です。MESTA GenはEVをベースとする普通自動車で、公道を自走し、電動建機が稼働する場所まで電気を届けます。建機を充電設備まで動かすのではなく、電気のほうから建機へ向かう仕組みです。普通自動車運転免許で給電車を運転することができるので、燃料を運搬するタンクローリーのような特別な資格も必要としません。

(写真:山間部の現場で電動建機に給電するMESTA Gen)

現場で確かめた運用とメリット

 実証では、小型から中型までの電動油圧ショベルをお客さまの現場へ持ち込み、MESTA Genの充電から現場への移動、建機への給電までの一連の流れを検証しました。休憩時間や工程の合間に補充電することで、作業を止めずに建機の稼働時間を延ばすことができます。また、給電車が建機のもとへ向かうため、移動速度の遅い建機が、現場と充電場所の間を往復する必要もありません。初期費用だけでなく、準備に要する時間や非稼働時間、周辺への負担までを考え検証したところ、導入のメリットが見えてきました。

使って変わった電動建機の印象

 電動建機に対しては「力が弱いのではないか」「水に弱いのではないか」といった懸念の声を聞きます。しかし、今回の実証で実際に操作したお客さまからは、エンジン車と遜色なく作業でき、静かで振動が少なく、扱いやすいという評価をいただきました。
バッテリーの重量を活かした低重心による安定性に加え、モーターは低速域でも力を発揮するため、ゆっくりとした操作でも確実に作業ができます。実際の現場で使うことで、電動建機に対する印象は、よりポジティブなものへと変わりました。

建機を活用する仕組みまでつくる

 今回の実証は、開発部門だけで実現したものではありません。実証現場を提供してくださったお客さまをはじめ多くの関係者の協力によって成り立ちました。今後は、必要な現場へ継続的に届け、活用していただくための運用体制や提供方法を具体化する必要があります。
 建機を販売して終わるのではなく、レンタルやリース、給電サービスなどを通じて、現場で継続して活用いただける仕組みまでをつくる。そこにも、コマツが提供できる新たな価値があります。今回の取り組みは、人々の生活圏にある建設現場を、より静かで働きやすいものへと変えていく一歩となっています。