災害復旧作業を変える遠隔施工の力

モビリティオフィスを活用した独自の災害復旧オペレーションで、いつもの技で、もしもに備える。

地域に根差し、挑戦を続ける総合建設企業

兵庫県北部但馬地域の中心都市である豊岡市に本社を構える株式会社西山工務店は、1967年の創業以来、建設会社として着実に事業を拡大してきた。現在は代表取締役の西山嘉一氏のもと、一般土木工事を中心に、道路・橋梁・トンネルなどの社会インフラ整備から住宅地盤改良まで幅広く事業を展開している。「私たちは『地域と共に永遠の発展を目指す』という企業理念のもと、地域から愛される企業であり続けることを大切にしています」と西山社長は語る。

(写真:株式会社西山工務店
代表取締役 西山嘉一 氏)

業界に先駆けてICT施工へ挑戦

同社がICT施工に取り組み始めたのは2012年。国土交通省がi-Construction※をスタートさせる2016年よりも4年早い。当時はまだICT施工の導入事例も少なく、その効果や運用方法も十分に確立されていなかった。同社ではまずデモ機を借り受け、試験的にICT施工を実施したところ、仕上がりは図面どおりだった。その高い施工精度を目の当たりにし、ICT施工が将来の建設業に欠かせない技術になると判断し、本格導入を決断した。

※建設業界における調査・測量、設計、施工、検査および維持管理・更新などのあらゆるプロセスにICTを取り入れることで、生産性の向上を推進するプロジェクト

ICTを活用し、徹底した内製化を推進

 ICT施工の導入により生産性は飛躍的に向上し、一部工事では工期を最大40%短縮する成果を上げている。現在、同社では地域建設業としては異例ともいえる25台のICT建機を保有。これまで国土交通省や兵庫県発注工事を中心に約50件のICT施工を手掛けてきた。最新世代のICT建機であるPC200i-12も発売後まもなく導入した。工務部の小林幸生氏は「レバーの高さを調整できるのがいいですね。また、アームの動作速度も好みに合わせて設定できます。キャブも広くなって、自分に合った快適な環境で作業できます」とPC200i-12を高く評価する。

 同社のICT活用における最大の特徴は「完全内製化」だ。測量、三次元設計データ作成、ICT建機オペレーション、そして現場管理まで、ICT施工に関わるすべての工程を自社で担う体制を構築した。「測量、設計データ、オペレーター、現場監督、すべてを内製化しています。外注すれば精度の高い成果物を簡単に手に入れることはできますが、ノウハウは会社に残りません。内製化することで技術力や経験値が向上し、企業として次のステップへ進むことができます。そして、それが企業の成長と利益につながるのです」と取締役工務部部長の高鍬昌也氏は語る。
株式会社西山工務店 工務部
小林幸生 氏
株式会社西山工務店 工務部
佐々木健 氏
CSPI-EXPO 2026のコマツブースで、災害復旧オペレーションの取り組みについて講演する取締役工務部部長の高鍬昌也 氏

地域を守るための災害復旧オペレーション

 ICT施工の導入によって培った技術やノウハウは、現在、新たな領域へと発展している。それが、モビリティオフィスを核とした災害復旧オペレーションである。「災害が発生した場合、私たちは誰よりも早く現場へ駆けつけ、安全かつ迅速に復旧作業を行わなければなりません。そのためには、危険区域に人を立ち入らせずに作業できる仕組みが必要でした。そこで、これまでに獲得したノウハウを活かした当社独自の災害復旧オペレーション『N-Rescue』を構築しました」と西山社長は語る。

 この仕組みは単なる遠隔操作システムではない。これまでICT施工で培ってきた測量、三次元データ活用、施工管理、情報共有といった技術を融合し、災害発生から復旧までをワンストップで支援する体制として構築されている。

モビリティオフィスを核とした遠隔施工システム

 「N-Rescue」の中核を担うのがモビリティオフィス――コマツと株式会社EARTHBRAINが共同開発した遠隔操作システムSmart Construction Teleoperationのキャブ機能を搭載した移動式の操作室だ。災害発生時には現場近くまで移動し、安全な場所から建設機械を遠隔操作できるほか、通信機器や情報共有設備も備えており、災害対応の拠点として活用できる。

PC200-11を遠隔施工機に採用し、建機本体にはオペレーターの目線に近い位置にカメラを設置。さらに機体周辺には複数の俯瞰カメラを配置し、作業状況を多角的に把握できるようにしている。映像と操作信号はStarlink※を通じて遠隔地からでもスムーズな操作を実現している。

「災害対応を考えると、操作環境そのものが移動できることが重要です。現場近くまで行き、自分の目で状況を確認したうえで、安全な場所から作業を行う。そのためにはモビリティオフィスが欠かせません」と高鍬部長は語る。

さらに同社では、ドローンとSmart Construction Edgeを活用して現況地形を短時間で三次元データ化し、Smart Construction Design 3Dで復旧計画を作成。そのデータをPC200-11へ送信することで、測量から計画、施工、情報共有までをデジタルでつなぎ、災害復旧の初動対応を大幅に効率化している。

※ 山間部や離島など固定回線が届かない地域でも安定した接続が可能な衛星インターネットサービス

遠隔施工の拠点となるモビリティオフィス

日々の訓練が支える遠隔施工の実用性

 「N-Rescue」導入にあたっては試乗や実証を重ねながら改良を進めた。「最初に試乗したレバー操作では油圧の抵抗やバケットの重さを感じることができず、機械を動かしている実感が薄かったのです。3月に導入されたレバー操作は実機に近い操作感で改良されていました」と工務部 職長の藤原伸也氏は語る。

 同社では現在、工事用道路設置現場で遠隔施工の試験運用を進めている。遠隔施工のオペレーターは3名に限定し、集中的に訓練を実施し、習熟を深めている。 災害はいつ発生するかわからない。日々の施工で培った技術を非常時にも活用できる体制こそが、同社が目指す災害復旧オペレーションの姿なのである。

(写真:株式会社西山工務店
工務部 職長 藤原伸也 氏)

地域の未来を見据え、新たな挑戦を続ける

同社が災害復旧オペレーションを通じて目指しているのは、日常の施工で磨き上げた技術を非常時にも活用できる体制を構築し、「いつもの技で、もしもに備える」ことだ。そして、その取り組みを地域建設業の新たな標準へと発展させることである。地域と共に歩み、地域を守り続ける。その使命を胸に、西山工務店の挑戦はこれからも続いていく。

(写真:遠隔施工時に使用する俯瞰カメラ。建機周辺の状況をリアルタイムで電送する)