彼らは数ある国のなかから なぜ日本を選んでいると思いますか?
外国人が日本を就業先に選ぶ背景には、他国との制度の違いや地理的条件、文化的背景など複数の要因があります。例えばEU圏では国ごとに入国制度や労働法が異なり、毎年のように制度が変わる国もあるため、送り出し機関にとって書類作成や対応の負担が大きく、人材移動が難しいのが現状です。また、アジア諸国から欧米など遠方への渡航は距離・費用面で大きなハードルです。この点、日本は20年以上にわたり技能実習制度を継続的に運用しており、受け入れ実績と制度も安定しています。さらに、アジア諸国との文化的親和性もあります。日本は仏教国として宗教観や価値観に共通点が多く、送り出し機関や候補者にとって安心できる就労先なのです。これらの要素が重なり、日本は「送り出しやすく、選ばれやすい国」として一定の信頼を得ています。
しかし一方で、労働環境の整備において、日本は欧米諸国に比べ遅れをとっています。建設業界での外国人労働者の受け入れ環境を視察すると、どの国でも建設業が若年層に人気がない点は世界的な課題でした。ただ欧米ではスキルを習得すれば高収入が得られる環境が整いつつあり、アメリカでは建設業の給与が小学校教員を上回ったことで、教員から建設業への転職の事例も報告されています。これは日本では見られない事例で、労働環境における大きな差を感じました。日本がこのまま改善されなければ、外国人労働者にとって魅力的でなくなる可能性があるでしょう。
次号150号では、三野輪氏に伺った現場で実際に働く外国人労働者の印象や、JACによる支援の具体策について掲載予定。