次代の畜産を支える飼料づくり。電動化が導く新しい工場像

フィード・ワン株式会社は「FE30G-2」の導入で、生産現場の効率化と脱炭素化を進める。

日本の畜産と食のインフラを支える

フィード・ワン株式会社は配合飼料の製造・販売を主軸とする飼料メーカーで、2014年に協同飼料株式会社と日本配合飼料株式会社の経営統合により誕生した。100年を超える飼料事業の伝統を受け継ぎ、日本の畜産と食のインフラを支えている。
同社は従来から、ふすまや大豆油かすなどの食品副産物を原料に活用するなど、循環型社会の形成に寄与してきたが、2020年にサステナビリティ方針を策定し、環境・社会・ガバナンスに配慮した経営の実現に向けて、その取り組みを一層本格化させた。「サステナビリティを経営の中核に据え、食のバリューチェーンを支える企業としての責任を果たすとともに、持続可能な社会の実現を目指しています」と経営企画本部経営企画部経営企画部長の宮﨑剛氏は語る。
(写真:フィード・ワン株式会社
経営企画本部 経営企画部 経営企画部長
宮﨑剛 氏)

新工場に電動式フォークリフトを導入

 北九州市に位置する北九州畜産工場は、2020年に稼働を開始した最新鋭の生産拠点である。同工場では、フレキシブルコンテナバッグおよび紙袋に詰めた飼料の搬送にフォークリフトを使用している。フレコンバッグは500kgの袋を2つで計1tを、専用アタッチメントを取り付けたフォークリフトで荷役し運搬。紙袋は20kg×50袋をパレットに積載し、フォーク仕様のフォークリフトで出荷場まで搬送される。いずれもトラックへの積み込みまでを担い、作業の効率化に貢献している。
 導入前はパワー不足を懸念する声もあったが、その心配は導入により一掃された。「エンジン式と比較しても、パワーは十分ですね。また、エンジン車のような振動がないのがいいですね。長時間作業しても疲労が少なく、快適に作業できます」と現場でオペレーターとして活躍している協力会社の門司港運株式会社ひびき営業所係長の立石俊太氏は語る。
(写真:門司港運株式会社 ひびき営業所係長 立石俊太 氏)
 出荷量の増加により当初6台だったFE30は一時9台体制にまで増強された。そのあと、1台のバッテリーが寿命を迎え交換の時期となった。「そのタイミングでコマツから、リチウムイオンバッテリー搭載のFE30G-2に変えてみてはどうかと提案がありました。デモ機による試乗を実施し、操作性や生産性の高さを実感しました。コスト面のシミュレーションも踏まえ、まずは1台を試験的に導入することになりました」と畜産事業本部北九州事業部北九州畜産工場生産課課長の田中裕士氏は語る。
(写真:フィード・ワン株式会社 畜産事業本部北九州事業部 北九州畜産工場生産課課長 田中裕士 氏)
 リチウムイオンバッテリーは、鉛バッテリーに比べて容量が約22%大きく、寿命も約3倍以上長い。しかも、充電時間は短く、こまめに継ぎ足し充電をしても性能の劣化が起きないという特長がある。従来のFE30では、急ぎの作業が入った際は十分に充電されていない状態で稼働せざるを得ない状況もあり、それがバッテリーの消耗に影響していた。さらに、リフレッシュ充電には13~14時間を要することもあり、業務スケジュールの調整に頭を悩ませていたという。一方、リチウムイオンバッテリーを搭載したFE30G-2では、昼休みと午後の小休憩時間にそれぞれ1時間程度の充電で1日分の稼働をまかなえる。リフレッシュ充電の必要もなくなり、運用の柔軟さと作業効率が大きく向上した。
(写真:北九州畜産工場に隣接する北九州水産工場で稼働するFE30G-2)

優れた安全性と作業効率の向上を実現

充電作業においても大きな改善点があった。FE30の充電では、ケーブルを差し込んだ後に2か所のロック操作が必要で、充電作業に煩わしさを感じることも少なくなかった。また、充電中にケーブルが抜けてしまうトラブルもあり、破損が発生するケースもあった。その点、FE30G-2は電磁ロック機構で、ケーブルを差し込むと自動的にロックがかかり、充電中に抜ける心配がない。安全性が高まり、充電作業もスムーズになった。
静音性に優れた電動式フォークリフトは、周囲の人がその接近に気づきにくいという課題があるため、同工場ではバック時に自動点灯するアーチライトを搭載。赤色LEDが約3m先の地面を照らし、視覚的な注意喚起によるヒヤリ・ハットの削減を図っている。「周囲の人に光による注意喚起があると、運転者側も安心して作業できます」と田中課長は説明する。今後は、段階的にリチウムイオンバッテリー搭載のFE30G-2への置き換えを進めていく方針だ。
(写真:赤いラインでフォークリフトの位置を可視化するアーチライト。視覚的な注意喚起によって、作業者との接触リスクを低減)

持続可能な社会の実現を支援

 同社は、食の循環を根底から支える存在であることを目指し、環境負荷の低減はもとより、人へのやさしさを意識した製品づくりや職場環境の改善に取り組み、「健康経営優良法人2025(ホワイト500)」に選出された。
「経営理念や行動規範の刷新をはじめ、社内制度の整備や人材育成、働きやすい環境づくりにも積極的に取り組み、従業員の働きがいや満足度向上を図っています。畜水産業と食を支える基盤を担うという使命に誇りを持ちながら、持続可能な社会の実現に向けて邁進していきます」と宮﨑部長は語る。畜水産業の未来を見据え、環境にも人にもやさしい「これからの飼料づくり」を、フィード・ワンは次世代へとつないでいく。

敷地面積は75,000m²で北九州畜産工場(55,000m²)に北九州水産工場(20,000m²)が併設されている。北九州畜産工場は月間最大36,000tの飼料製造能力を誇る。24時間体制で常駐スタッフはわずか12名。先進的な自動化技術により、高い生産性と省人化を実現している。