Daichi Report

部品をつくる。そして 再生して、未来につなぐ。

「お客さまの稼働を止めない」を製品循環の輪で実現するリマン事業
部品再生分野は、持続可能な社会の実現に向けて世界的に重要性が増している。コマツの主要事業である部品事業では、自社開発・製造している強みを活かし、コンポーネントの再生に取り組んできた。その再生工程で得た耐久性や性能の知見は製品開発にも還元され、品質向上に寄与している。

新品と同じ品質で、環境にも事業経営にも やさしいを叶える再生技術「リマン」

 「リマニュファクチャリング(Remanufacturing、以下リマン)」とは「再生」を意味し、使用済みのコンポーネントや部品を回収し、それらを分解・再製造して新品と同等の品質に仕上げ、タイムリーにお客さまに供給する事業を指す。資源の再利用やコスト削減が可能となるため、需要が世界的に拡大している分野だ。コマツはこのリマンにいち早く取り組んできた。
 「私がリマンを知ったきっかけは、2000年代にチリのリマン責任者が来日した際に言われた『日本にはリマンはないのか?』という言葉でした。もともとリマン事業は、チリやインドネシアなど鉱山産業が盛んな地域において、お客さまが自ら鉱山機械を修理していたことに起源を持つビジネスです。そこから、メーカーが修理済みコンポーネントに保証を付けて提供するという形へと進化してきました」と、部品・リマン推進本部本部長の櫻井直之氏は語る。
 コマツのリマン事業は、製造から販売までを担うメーカーとしての強みを活かし、自社製の鉱山機械や建設機械のエンジン、トランスミッションなどのコンポーネントを回収・再生し、新品と同等かつ世界共通の品質基準で提供している。
(写真:チリの鉱山にて活躍するコマツ製の鉱山機械)

Komtraxとリマンが叶える、お客さまの安心感と更なる製品の品質向上

 リマンの品質のほかにも、コマツリマンの特徴といえば、Komtrax※などによる適切なタイミングでのオーバーホール(分解・点検・修理)の提案と、グローバルな体制で地域ごとに拠点を持っていることだ。
 一般の自動車の生涯稼働時間に比べて、鉱山機械は30倍、建設機械は5倍と格段に長いため、定期的なオーバーホールが不可欠だ。しかし、タイミングが早すぎるとお客さまのコスト負担が増え、逆に遅れれば故障が発生し、現場の稼働に深刻な支障をきたすおそれがある。また、部品を保有する拠点が遠方にあると復旧に時間がかかってしまう。しかしコマツリマンは、地域ごとに拠点があるため、部品の返却が迅速で、修理の進捗も可視化できる。
 さらに、必要に応じてお客さまが修理現場を直接確認することも可能だ。加えて、使用済み部品の再生品を使用することで、新品の部品に交換するよりもコストを数十%削減することができる。
リマンエンジンの塗装工程
リマン前(左)とリマン後(右)のエンジン
 また、リマン事業の部門があるということは、新車の分野にも大いに関係してくると櫻井氏は語る。「新車を購入する際、特に新規コンポーネントを搭載した新製品の場合は、『いつ壊れるかわからない』などのコンポーネントへの懸念が挙がります。しかし、故障があってもリマン部門があればすぐに対応できる。これは買う側にも売る側にも安心材料になります」
 最近では、前号(149号)にて取り上げたコマツクイック株式会社と連携し、バッテリーフォークリフトに使用されているバッテリーなどの高額なコンポーネントをリマンし、活用することで、お客さまが機械を安価に購入できるような取り組みも検討しているという。

「リマン事業に興味を持っていただくことは、すごくうれしいことです。これから、もっとたくさんの方にリマンを知っていただき、日本のお客さまにも実際の作業を見学しにリマンの現場へ足をお運びいただければと思います」と、櫻井氏は締めくくった。
(写真:コマツ執行役員生産本部
部品・リマン推進本部本部長 櫻井直之氏)

 コマツでは新品同等の品質にリマンするだけでなく、回収した製品を修理する過程において設計改善の余地を発見し、コスト削減や耐久性の向上を図ることができる。実際にダンプトラックの軽量化に成功しており、燃費向上につながった実績もある。今後は、「リマン」を前提とした部品設計がさまざまな製品において進むと予想される。リマンは、循環型社会を築くための重要な役割を担い、日本でも未来へつなぐ架け橋となるだろう。

 

※コマツが開発した建設機械の情報を遠隔で確認するためのシステム