Daichi Report

軽量×パワーで建機の可能性を最大化 ‐株式会社タグチ工業‐

2024年5月、幕張メッセで開催された「CSPI-EXPO※1」で、創業63年の歴史を誇る建機用アタッチメントメーカー、株式会社タグチ工業の展示ブースが来場者の目を引いていた。中央には、コマツのPC30E-6が据えられ、その周りにぐるりと同社製品が配置されている。ブースを取り巻く来場者の前で、オペレーターが建機に乗ったままアタッチメントを交換できる「ワンキャッチ」のデモが行われていた。今回、屋内展示にPC30E-6を導入した経緯とその狙い、今後の展望について、同社代表取締役会長、田口裕一氏に話を聞くことができた。

導入の決め手となった静音性

2022年、ドイツでのbauma※2を視察した際、コマツのエレクトリックショーで静かに稼働する電動建機を目にし、今回の実演で採用することを決めました。近年、建機メーカー各社は小型建機の電動化を急速に進めています。今回の展示では、こうした建機にも当社のアタッチメントが適していることを示す好例としたわけです。

エンジン式と遜色ない動作

PC30E-6の動作はエンジン式のものと変わらず、アームの動きは非常にスムーズで、全く違和感はありませんでした。もちろん静音性の高さは圧倒的で、今回のような室内展示には積極的に活用していきたいと考えています。

スタンダードとなるワンオペレーションの流れ

今回、当社の展示コンセプトは「省人化」です。これまでピンの脱着で付け替えていたアタッチメントを、「ワンキャッチ」によって建機オペレーターが一人で行うことができるようになります。欧州ではワンオペレーションが定着していて、「一人で現場に入ってカラーコーンを置いて」「一人で工事して」「一人で片付けて帰る」のが普通の光景になっています。日本でも、省人化のためのアタッチメントが必要不可欠なものになっていくでしょう。

JAXAとの取り組みが鍛えてくれた軽量化

軽量化の取り組みでは、パワーを落とさないことが重要です。当社は2年前までJAXAと共同開発を行っていました。※3 宇宙に物を運ぶには費用がかかることから軽量化のニーズが生まれます。この視点は電動建機のアタッチメントにも同様に活かされます。宇宙への視点は省人化の先の無人化、つまり「遠隔操作」にもつながり、こうした技術こそコマツの出番も多いのではないかと思います。

(写真:©タグチ工業 / JAXA)
宇宙航空研究開発機構 (JAXA)と共同研究開始
宇宙探査イノベーションハブに参画し、超軽量建機などを共同研究

電動建機は、地方や災害時にこそ活躍の場が広がる

地方では給油所が減っていますが、電気は必ず通っています。PC05E-1は100ボルトの家庭用電源があれば動かせるため、活躍できる場所は多いでしょう。またEVの普及で、大型スーパーやホームセンター、集合住宅でも充電スタンドが増えており、これも追い風になると考えられます。そして災害時に、電気はすぐ落ちる印象がありますが、早い復旧が期待できるライフラインです。※4 加えて、発電機や太陽光発電と組み合わせることで、更に可能性が広がると思います。
「ワンキャッチ」は国産として初の完全油圧式アタッチメント交換アダプター
時にユーモアを交えながら、建機業界の未来を語る田口会長

製品特性に合った技術開発連携を目指したい

当社の製品はメーカー各社に対応できるように汎用的なものになっていますが、メーカーごとの特徴に合わせてカスタマイズしていきたいと考えています。将来的にはコマツ技術陣との連携を深め、最善のチューニングを行い、コマツの建機の可能性を最大化することに貢献したいと願っています。

創業63年目にしての想い

タグチ工業は先代が創業し、私は会社と同い年です(笑)。同業者には一世紀を超える企業もありますので、我が社は後発の立場を自覚して、たゆまぬ挑戦を続けていくつもりです。もちろん従来の考え方に捉われず、時代のニーズに合わせて常に革新を続け、お客さまに最善のソリューションを提供し続けていくことが、我々の願いです。

 

※1:第6回 建設・測量生産性向上展(2024年5月22日〜24日)
※2:「bauma 2022」はドイツのミュンヘンで開催された国際的な建設機械見本市
※3:「ワンキャッチ」はJAXAとの共同特許
※4:東日本大震災におけるライフライン復旧概況
https://www1.gifu-u.ac.jp/~nojima/LLEQreport/110311-GEJEQD-LL-GUNN-ver.1.pdf