Daichi Report

お客さまごとの悩みを解決してきた 「究極のオーダーメイド部門」がコマツの電動化を牽引 有線式電動製品を生み出した粟津工場ワーキングギア室とは

現場のカーボンニュートラルをかなえる有線式電動製品(PC78USE/PC138USE)を生み出したコマツ粟津工場。機械の電動化プロジェクトを担う粟津工場ワーキングギア室のメンバーに、製品開発の背景とコマツが目指す電動化の未来について語ってもらった。

コマツ 粟津工場ワーキングギア室

  • 徳永晋一 チーム長
    2000年からワーキングギア室に配属。北米勤務で林業機械などに携わった後、2019年から同室の電動化プロジェクトを推進
  • 北川裕章 主任技師  
    2008年に新卒でワーキングギア室に配属。ホイールローダーなどの開発に従事した後、電動化プロジェクトに参画。PC78USEの開発を短期間に実現するべく奔走
  • 青山裕貴 
    2013年の入社以来、主にショベルカーの開発に従事し、2019年からPC138USEの開発を推進。度重なる改良に尽力し、2022年にお客さまへの納入を果たす
  • 朝倉千博 主査
    開発本部 車両第三開発センタ
    「よりお客さまに近い開発」を求め、社内公募でワーキングギア室へ。本社商品企画室を経て、2017年よりワーキングギア室に駐在。同室の商品企画を担当

顧客要望にマッチした製品を スピーディーに届けるミッション

私たち「粟津工場ワーキングギア室」は、簡単に言うとお客さまごとのニーズをくみ取り、最適な製品を提供するチームです。特殊仕様は、解体、林業、産廃処理、河川、港湾と多種多様な業界で求められており、現場でのニーズも千差万別。我々開発陣がお客さまと直接向き合い、限られた時間と予算のなかで高品質なものをお届けするのがミッションです。
なかでも特に重視しているのはスピード感です。お客さまの立場からすると、一刻も早く現場で使いたいわけですから、できるだけ早く提供できるよう日々励んでいます。

一社のニーズが電動化の布石に

今から20年ほど前、お客さまからの要望で有線式電動油圧ショベルを開発・納品したのが最初です。その製品が古くなったため更新したいという話をいただき、改良を重ねて製品化を進めました。元々は一社のニーズが始まりですが、カーボンニュートラルを目指す多くの現場で必要とされていることが次第にわかり、2019年から本格的に電動製品の開発に乗り出しました。

安全という至上命題

安全に関してはすべてのコマツ製品において最重要テーマですが、有線式電動油圧ショベルでは特に注力しています。オイル漏れなどエンジン駆動式の建機では目に見えるものが電動建機にはないため、ある意味本当に怖い。有線式電動油圧ショベルは屋内外の多様な環境で高電圧を使用するので、漏電などの危険がないよう、さまざまな安全構造を採用しています。

環境にやさしいだけではない、有線式電動によるメリット

有線式電動の場合、電気があれば即時に稼働できます。充電の必要もなく連続使用が可能なので、産廃の現場などでは24時間稼働を実現しています。
また、電動製品はモーターの表面温度が60〜70度ぐらいまでしか上がらず、燃えやすい物のある現場でも火災の心配が減ります。可燃物を取り扱うお客さまからはこの点も評価されています。
メンテナンス面でも、モーターを中心としたシンプルな構造なので、従来の油圧製品に比べ管理しやすく、トラブルでお伺いするケースは圧倒的に少ないと感じています。

都市型施工への可能性を開く究極の静音性​

もう一つ重要なメリットとして静音性があげられます。例えば、住宅地で造園業を営む企業様*2では、従来、騒音を低減するためエンジンを低回転で稼働させる必要がありました。それを有線式電動油圧ショベルに切り替えたことで、フルパワーで作業を進めることができるようになり、効率が格段に向上されたようです。ただ、あまりの静かさに機械が動いているかどうかわかりづらいため、稼働中はパトライトが作動するようにしました(笑)。

有線式電動の可能性を広げる取り組み

有線式電動油圧ショベルは、必ずお客さまごとにカスタマイズされます。産廃仕様、ブレード装着、スーパーロングなど、まさに多種多様の仕様が求められるわけです。富山の産廃企業様では地元の設備会社と協力し、電力供給用のケーブルを「カーテンレール状」のものと組み合わせ、施設内の移動範囲を広げる構造にしました。このように、有線ならではのメリットと可動性を広げる取り組みは、今後も続けていきたいと思っています。

顧客ニーズで製品を進化させ続ける

今後、有線式電動油圧ショベルがより多くの現場で活躍できるよう、製品の改良はたゆまず続ける必要があります。CO₂の削減効果とコストメリットの大きい有線式電動油圧ショベルですが、ゆくゆくはバッテリーの併載などで短距離を自走できる仕様なども検討し、「お客さまの期待に応える開発」という姿勢は貫いていきたいです。

もっと多くのお客さまの声を

私たちの基本方針はそれぞれのお客さまの真のメリットを追求することです。有線式電動油圧ショベルはその一つの形ですが、お客さまが契約している電力会社のプランによって、ランニングコストの削減効果やCO₂の削減量などは異なるため、具体的なメリットを数字で示すようにしています。お客さまのニーズが私たちを鼓舞し、新たなアイデアを生み出す原動力となります。ぜひ、コマツの担当営業にお気軽にご相談いただきたいです。

木材チップなど可燃物の多い製紙工場などでも火災予防観点から採用が進む

(写真 株式会社ニチモク林産北海道)

笑顔が印象的なワーキングギアのメンバーたち。立場を越えた風通しの良い職場が、多様なお客さまのニーズに応える力を生み出している

ワーキングギアという名前は「働く道具(機械)」の意味が込められたもの。これからもお客さまそれぞれの真のニーズに寄り添った製品開発のため走り続ける

コマツ 電動化のあゆみ

数々の先行研究と20年を超える開発のなかで、現場で真に求められる電動製品を充実させてきた。積み重ねたこの実績を、更なる進化につなげていく。