深刻化する人材不足をICTで解決する

ICT建機の積極活用で天草市の建設業を牽引。実践するスムーズでリーズナブルなICT施行とは。

優れた技術で天草市の建設業を牽引

海に囲まれた自然豊かな熊本県・天草諸島。その主島の一つである下島に拠点を構える有限会社工藤ブルドーザー。公共工事を中心とした圃場整備や道路改良などの建機工事を専門に展開している。創業40年の歴史を誇り、天草の土木工事におけるリーディングカンパニーとして地域の建設業を牽引する。現社長は、2019年に就任した二代目の工藤政行氏だ。

同社の強みは建機を活用した建機工事の技術の高さだ。長年の経験で培われた優れた技術は安全かつ確実で、天草において他の追随を許さない。

(写真 有限会社工藤ブルドーザー 代表取締役 工藤政行 氏)

人材不足をICT施行で解決

優れた技術力を誇る同社だが人材の確保には苦労している。「現在、天草市の人口は減少し過疎化・高齢化が著しく進んでいます。『3K』のイメージもあり、求人活動を継続的に行ってもなかなか採用には至りません」と、工藤社長は人材不足の現状を語る。現在のリソースでいかに業務を推進するかが課題だが、その解決策として取り組んでいるのがICTだ。

工藤社長はICT導入に当たり、さまざまな情報を収集し独学で知見を高めていった。検討した結果、同社のオペレーターの高い技術力を前提とすると、マシンコントロールまでは必要なく、マシンガイダンスで十分な効果が期待できると判断。20205月にPC200-11を購入後、コマツIoTセンタ九州でレトロフィットキット装着機の機能性を体験。20218月に後付けマシンガイダンスのレトロフィットキット装着を決めた。

ICT施行が効率性と安全性を実現

「従来機での作業の場合、油圧ショベルのバケットは位置が深くなるほど水平に引くことが難しくなりますが、ICT建機の場合、タブレットを確認すれば真っすぐ水平にバケットを引くことができます。わざわざ降りて確認する必要がなくなり、作業が効率的になるだけでなく、体力的な負担も大きく軽減されます。また、手元作業員が不要で、少ない人員で効率的に作業ができ、事故の可能性も大きく減ります」と、工藤社長はICT建機の特長を語る。

3D図面不要のクイックスマコン

同社では、図面の3D化を必要としないクイックスマートコンストラクション(クイックスマコン)という手法によりICT施行を行っている。クイックスマコンとは、ICT建機の無限平面を作成する機能と平面図をモニターに表示する機能を活用し、簡単に3D施工を実現するICT施工の手法だ。測量は固定局を必要としないSmart Construction Rover (スマート・コンストラクション・ローバー)によるGNSS測量を行っている。レトロフィットキット装着機と連携することで、ローカライゼーションデータを測量しながら随時取り込むことができる。これにより、測量の手間を大きく省くとともに、簡単にICT施工が行える。

工藤社長は「測量に関しては、本当に助けられています。光波での測量で34日かかっていたものが、わずか3時間程度で完了します。また、図面の3D化も丁張も必要なく、労働時間を大きく削減できる。従業員が少ない企業にとっては本当に頼もしいです」と、ICT施工によるメリットを解説する。

ICTの認知拡大にも貢献

同社ではICT建機を活用した業務を積極的に推進したい考えだが、自治体が行うICT活用工事の数がそれほど増えていないのが現状だ。そこで同社は、ICT施行による優れた工事品質や効率性を、元請けを中心とした業界関係者に広く理解してもらうために、従来施行に近い価格で業務を請け負いながら、適切と判断したケースでICT施行を行っている。これは、本体価格に若干の上乗せ程度の価格であるレトロフィットキット装着機とクイックスマコンの組み合わせだからこそ実現できる展開ともいえる。

レトロフィットキット装着機とSmart Construction Roverとの連携による、手軽で高精度な土木測量は、業務効率を更に高める

タブレットのモニターにより状況をリアルタイムで確認、正確な作業をスムーズに行う

Komtraxによる稼働状況の管理

また、コマツの独自機能Komtraxにも大きなメリットを感じているという。Komtraxは、複数の現場で稼働する建機の一括管理を可能にする。「燃料の消費状況を確認できるので、コスト管理に大変役立っています。コマツの担当者にも使用状況を把握してもらえて、こちらが気付く前に消耗品を持ってきてくれるので、現場が止まりません。また、どの建機がどのような状態にあるのかが一目でわかり、12時を過ぎても稼働しているオペレーターには休憩の指示を出せるなど、オペレーターの健康維持にも一役買っています」と、工藤社長はKomtraxのメリットを語る。

天草市の労働力確保に貢献

工藤社長は地域社会の活性化にも積極的だ。天草市の若い人材は九州本土などで就職することも多く、天草市内では労働力不足が深刻化している。熊本県天草地区建設業協会では工藤社長を含めた若手経営者が中心となり、天草市の高校生が建設業に興味を持ち、地元企業への就職に関心を持ってもらうためのバスツアーを企画・運営している。建設現場を見学したり、コマツIoTセンタでICT建機に触れたり、建設業の魅力や面白さを実感してもらう内容だ。「天草市の労働力不足は建設業だけの話ではありません。いろんな業界が力を合わせて、地元就職を増やしたいと考えています」と、工藤社長は地域社会への思いを語る。

唯一無二の存在を目指す

ICT建機を最大限に活用した土木工事により、天草市内での存在感を高めてきた工藤ブルドーザー。今後は更に積極的にICTを取り入れ、唯一無二の存在を目指すという。「ICT施行は速いし、正確だし、安全です。人材不足に悩む我々にとっては本当に便利なツールだと考えています。これからも、地域の建設業を牽引し、地元採用を含めた地域の活性化に貢献していきたいです」と、抱負を語る工藤社長。地域社会にしっかりと軸足を置き、その目は未来を見据えている。