経営者の妻への役員退職金

掲載日:2025年10月10日

【セミナでのご質問】

私は夫の会社で経理担当の役員をしています。
在任期間は29年余りになり、厚生年金を受け取れる年齢になりました。現在、役員給与は月40万円を受け取っていますが、このため年金が減額される可能性があります。そこで、そろそろ引退を考えています。そこで質問です。
① 経営者の妻でも、会社から役員退職金を受け取ることはできますか?
② 受け取れる場合、税務上認められる金額の目安はどのくらいですか?
③ 役員退職金にかかる税金はどのくらいになるのでしょうか?

【キド先生からの回答】

(質問①の回答)

会社に役員退職金の支給規程があり、一定の手続きを行えば、役員が経営者の妻であっても退職金の支給は認められます。


(質問②の回答)

支給額の目安は、会社の役員退職金規程や内部留保・利益状況によって判断されます。一般的には、次の計算式が目安となります。
計算式:最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率

ご質問の例に当てはめると、

  • 最終報酬月額:40万円
  • 在任年数:30年(端数切り上げ)
  • 功績倍率:1(規程で定めた倍率。最高は社長の3倍)

計算すると、
40万円 × 30年 × 1 = 1,200万円
株主総会の承認が必要ですが、概ね1,200万円を上限の目安として、顧問税理士と相談されるとよいでしょう。


(質問③の回答)

退職金を受け取ると、奥様には退職所得として所得税が課税されます。ただし、退職所得には基礎控除があり、在任年数に応じて控除額が決まります。

  • 在任年数が20年間までは、1年あたり40万円 × 在任年数
  • 20年を超える分は、1年あたり70万円 × 超過年数

ご質問のケースでは、
20年 × 40万円 +(30年 − 20年)× 70万円 = 1,500万円
つまり、支給額が1,500万円以内であれば、基礎控除額の範囲内なので税金はかかりません。

【キド先生のコメント】

ご質問のケースでは、奥様に1,200万円の退職金を支給すると、
● 法人側では経費として処理可能
● 奥様の退職金には所得税がかからない
ということになります。
詳しくは顧問税理士と相談して、適切な手続きを確認してください。