「電動化」という選択肢を持つことが機械化の推進に大きな意味を与える

人力作業の機械化・電動化を推進。製紙用チップ製造における、適材適所の建機導入とは。

日本製紙グループとして事業展開

北海道・旭川駅から車で20分ほどの場所に、114万m²もの広大な敷地を有する日本製紙株式会社の旭川工場がある。その中に本社を構えているのが、日本製紙のグループ企業である株式会社ニチモク林産北海道だ。

1980年に株式会社国木林業として設立され、2006年に現社名へと変更した。主な事業は、日本製紙向けの製紙用チップの製造と、4万3,000haにおよぶ日本製紙の社有林の管理。「道内に8工場を配し事業を展開しています。日本製紙のグループ企業として、グループが掲げる『木とともに未来を拓く』のスローガンのもと、木質資源の循環や社会の発展に貢献していきたい考えです」と、株式会社ニチモク林産北海道代表取締役社長の飯塚亨氏は語る。

(写真)株式会社ニチモク林産北海道 代表取締役社長 飯塚亨 氏

 

月間で約2,000tのチップを製造

8工場ではそれぞれ機械化された先進的な環境で製紙用チップ製造を行っている。その製造工程を紹介しよう。まず、原料となる原木が日本製紙の社有林および、道内の各山林から各工場へ搬送される。原木はドラムバーカー(樹皮剥離機)に投入され、樹皮を剥離する。そして、樹皮の剥離具合や原木の状態を目視検査し、選別を行う。樹皮が残っている原木はリターンベルトでドラムバーカーへ戻し、曲がった原木はチェーンソーを使ってその場で切断。適正と判断された原木のみが切削工程に進み、チッパー(切削破砕機)で切削チップがつくられる。その後、スクリーン(ふるい機)にかけられ、規格サイズのものが製紙用チップとして納品される。旭川工場では1日に約100t、月間で約2,000tもの製紙用チップが製造されている。

業界に先駆けて選別工程を機械化

現在、すべての工程を機械で行っているが、選別工程は長い間人力で行われていた。4人の作業員が(とび)という道具を使って重量のある原木を持ち上げて検査を実施。原木のリターンベルトへの移動も、チェーンソーでの切断作業もすべて人力。体力的に大きな負担になるとともに危険を伴う作業となっていた。

そこで、効率と安全を確保するために、同社では1994年にグラップルソーを装着したPC60-7を導入。これまで4人がかりだった作業が1人で安全に行えるようになり、業務の大幅な効率化が実現した。

有線式電動油圧ショベルの導入

ところがしばらくすると、粉塵を原因とするラジエーターの目詰まりが発生し、オーバーヒートが頻発するようになった。そこでコマツは電動式への切り替えを提案。1996年に、エンジン駆動式PC78US-2を有線式電動仕様へと改造し導入した。「有線式電動油圧ショベルなら目詰まりや排ガス、振動もありません。とても快適に作業できました。エンジンに対し低出力なモーターを採用したと聞きましたが、実務上でパワー不足は感じられず、業務が効率化できました」と、取締役原材料事業部担当部長の岩城純一氏は初めて有線式電動油圧ショベルを導入した時の感想を語る。このPC78US-2の電動仕様機は大きな故障もなく、36,000時間という驚異的な稼働時間を記録した。

株式会社ニチモク林産北海道
取締役原材料事業部長兼営林事業部長 小田弘昭 氏 

「電動化」による快適化とコスト減

PC78US-2の有線式電動仕様への改造機の後継として同社では同じく電動への更新を希望したが、当時PC78USシリーズの有線式電動油圧ショベルはまだ開発されておらず、PC78US-10を導入することになった。エンジン駆動式ではあるものの、オーバーヒートも少なく快適に運用していたが、有線式電動のPC78USE-11が発売されることを知って再び電動へと舵を切り、2022年に導入した。
「以前有線式電動を使用していたこともあり、そのメリットは十分に理解していましたので、迷うことなくPC78USE-11の導入を決めました。前回電動を導入したときのキュービクル式高圧受電設備がそのまま使えましたし、コマツからも当社の作業環境をよく理解したうえで提案してもらったので、レイアウトの変更もなくスムーズに導入できました。エンジン駆動式以上のパワーを感じますし、使い勝手もいい。クリーンで振動も少なく、業務はより快適になりました」と、原材料事業部旭川工場工場長の白鳥康晴氏は語る。
 また、取締役原材料事業部長の小田弘昭氏は「日本製紙旭川工場はバイオマス発電による自家発電で電力供給しており、当社の旭川工場もその電力を使用しています。グループ企業の電力を使うことでコスト削減になりますし、自然環境への負荷軽減にもつながります。また、メンテナンスの頻度も少ないため時間的な余裕が生まれ、その分ほかの業務に時間を費やすことができます」とPC78USE-11がもたらすメリットを説明する。
株式会社ニチモク林産北海道
取締役原材料事業部担当部長
兼滝上工場工場長兼下川工場
工場長
岩城純一 氏
株式会社ニチモク林産北海道
原材料事業部旭川工場工場長
白鳥康晴 氏

更なる機械化で企業の成長を目指す

業界全体の課題として人材不足があげられるが、同社では林業・木材産業の専修学校「北海道立北の森づくり専門学院」からインターンシップを受け入れ、林業の醍醐味や自然の中で行う仕事の面白さを伝え、学生の就職活動を支援している。

今後はコマツとのリレーションをより深め更なる機械化を推進し、業務の効率化や安全性の向上、そして人材の確保につなげていく考えだ。「企業の成長の鍵は機械化が握っていると言っても過言ではありません。経験の少ないスタッフでもベテラン同様に精度の高い業務を行えますし、性別や年齢に関係なく個人の持ち味を発揮できます。コマツには、無人で業務を完遂するようなAI技術を駆使した製品など、人材不足を解決するソリューションの提供を期待しています」と、飯塚社長は機械化を一つの軸とした企業の成長戦略を描いている。


有線電動式油圧ショベル PC78USE-11

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