機械化を先駆けて 林業のステイタスを高め 業界に新しい風を吹き込む

有限会社 戸髙興産

代表取締役社長 戸髙明仁 様

林業の機械化を進め ステイタスを高める

宮崎県北部の中心都市、延岡市に本社を置く有限会社戸高興産。経験ゼロから新規参入した林業で、県内トップクラスの生産量を誇る木材生産企業になるまで、わずか二十余年。その急成長の裏には、従来の林業の常識を覆す人材活用と作業の効率化、そしてそれを支える徹底した機械化があった。

延岡市に隣接する大分県佐伯市の山林では、コマツのPC160LCハーベスタ・プロセッサ仕様車が、伐採した木の枝払いと玉切り作業を繰り返していた。伐採した木をつかみ、枝を払いながら一定の長さに切り分ける。雨上がりの足元もおぼつかない中でも、作業は淡々と続く。
    この現場で集材用のグラップル仕様車、運搬用のフォワーダなど、合わせて6台の機械を駆使して作業を行っているのが戸高興産だ。「機械化を進めることで林業のステイタスを上げていきたい」

    そう語るのは、戸高興産代表取締役の戸髙明仁さん。戸高興産は年間で4万㎥を越える木材を産出する、宮崎県でもトップクラスの生産者だ。山林を山の所有者から丸ごと仕入れ、きれいに伐採する。常時3つの現場が稼働しているが、現時点で約1年分の在庫があるそうだ。
   なぜこれほど仕入れがスムーズにできるのか。他より高く仕入れるだけでなく、戸高興産は仕事がきれいだと質の面でも評価が高い。仕入れ値が高くても、機械で作業効率を格段にあげることができ、薄利多売で利益を確保できる。また安全に植林ができるように作業道を作り、水の流れを整備することも、建設機械を駆使すれば何なくできる。
「最新の高性能林業機械を使うので安全だし、お客様にも喜ばれるので、やりがいもあると思います。未経験の若い人も入ってくるようになりました」戸髙さんは機械化林業の将来に手ごたえを感じているようだ。

(写真:代表取締役の戸髙明仁さん)

安定操業を実現し 従業員の待遇を改善

 サラリーマンだった戸髙さんが一念発起して林業に挑んだのが26歳のとき。「両親が営むシイタケ農家を継いでも生活できない」という危機感があった。林業を選んだのは、林業の景気が良かった子どもの頃の話が漠然と頭に残っていたから。といっても、右も左もわからない世界。兼業農家で山の知識がある人を何人か雇い、請負生産を始めた。戸髙さん自身も、道具の使い方を一から教わり、現場で汗を流した。事業化のめどが立ち、戸高興産を設立したのが1997年、戸髙さんが33歳のときだ。
    今でも林業というと、チェーンソーを使い、木を倒したり、傾斜での作業など、大事故につながる要素が大きい。さらに仕事がきついわりに労働条件が悪く、21世紀を目前にした設立当時は多くは日給制だったという。しかも雨が降れば作業はできないので、林業だけでは家族は養えない。
    そこで戸高興産では、現場での機械化を進めると同時に、従業員全員を月給制にし、社会保険も完備した。県内では先進的な待遇だったという。「機械の導入によって雨天でも作業ができるようになり、生産が安定したことが大きかった」という戸髙さん。「製材所の信用を得て契約を結ぶことができ、販売先を探す苦労もなくなりました」
    2004年にはその労働環境が評価され、農林水産大臣表彰を受けた。今では従業員全員で海外旅行に行くなど、福利厚生も充実してきた。従業員のモチベーションも高まっているという。

(写真:代表取締役の戸髙明仁さん)

残材利用でバイオマス 林業の新しい可能性も模索

 2002年、戸高興産が初めて自社購入に踏み切った林業機械はコマツのPC120。「レンタルでいろいろな機械に乗りましたが、コマツが一番使い易かったんです」と、戸髙さんはいう。
    以来、購入する機械はコマツ一筋だ。1台最新の機械を導入すると、他の現場でも欲しがるので続けて2台。そんなサイクルで年間3台ほど買い替えや買い増しを行い、現在19台を保有している。2月には、最新のPC170LC-10グラップル仕様車を導入した。
    ここまでコマツにこだわるのは、性能もさることながら、〝人〞の要素も大きいともいう。特にサービスマンには全幅の信頼を置いている。「まだ機械が2台しかない頃、修理のお願いをすると、早朝、私たちが出勤する前に来て修理してくれたこともありました。1台止まると作業量が半分になるので助かりましたね」
    戸高興産では林業の新しい可能性を模索しており、ここでもコマツは協力している。今注目しているのが木質バイオマス。山では切り払った枝など、材木としては使えない林地残材が大量に発生する。これを放置すると雨などで川や海に流れ込み、被害が出る。逆にその残材をバイオマスに利用できれば山が片付き、自然エネルギーになり、利益につながる。コマツでは戸高興産と共に林地残材用グラップルを提案し、株式会社室戸鉄工所に製作してもらった。戸高興産では3台を共有して林地残材の集積に使っている。
「残材利用は流通コストがかかるので、今は利益度外視。いずれ現場でチップにしてバイオマス工場へ直送するような仕組みができればいい」と戸髙さんはいう。「そのためにもコマツの技術力、開発力は頼りにしています」
    宮崎の地で林業に新しい風を吹き込み続け、業界の古い常識を変えてきた戸髙さん。
これからも林業が注目を集めるよう「人がしていないことを先にしたい」と意気込んでいる。

(写真:PC170LC-10グラップル仕様車による木材の運搬作業)

お客様プロフィール

有限会社 戸髙興産

本記事は2016年 Vol.121 「大地」記事を基に掲載させていただきました。
<事業内容>
■木材の素材生産業


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