搭乗型VRシミュレーター「KF400」導入

林業アカデミー研修生を対象とした研修会の模様をお伝えします。

※取材時のモデルは「KF400」でしたが、最新モデルは「KF500」となります。

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林業アカデミー研修生を対象に研修会を開催

林業界に高性能機械導入の波が広がっている。大分県では2020年1月22日、ハーベスタと呼ばれる林業用機械の研修のための搭乗型VRシミュレーターを導入。同30日には林業アカデミー研修生を対象とした研修会が、由布市の大分県林業研修所で開かれた。即戦力となる林業者の育成につなげるねらいがあり、その取り組みを取材した。

大量供給へ「間伐より皆伐」

県担当者によると、スギ、ヒノキといった国産の木材の需要は高まりつつあり、安定供給に向けた取り組みが積極的に実施されている。農水省のまとめによると、国産の木材需要は減少傾向にあるものの、これまでの造林・保育による資源の造成期から、主伐が可能な資源の利用期へと移行する段階にあるとして、国産木材の需要拡大が推進されている。さらに大分県では新規林業就業者も多く、2019年度には105名が就業。木材の大量・安定供給のため「間伐より皆伐」と打ち出し、高性能機械の導入を進めている。

(写真:搭乗型VRシミュレーター「KF400」を操作する林業研修者)

「安全・安心な操縦を楽しく学べる」

今回導入したのはコマツのハーベスタシミュレーター「KF400」。ハーベスタとは、油圧ショベルに装着する形で使用する、伐採から玉切・集積までを一貫して行うことができる機械。「これまで、伐採では主にチェーンソーが使用されてきました。しかし、チェーンソーを用いた伐採、玉切、集積は重労働であることに加え、危険も伴います。重大な事故につながるケースもしばしば見られ、林業では業務を効率化するだけでなくこのような危険を未然に防ぐ対策が求められていました」(県担当者)。
このシミュレーターは座席に搭乗し、実際の機械と同様に設けられたペダルやコントローラーを用いてVR(バーチャルリアリティー)空間で機械を操作する。前方にある3面モニター(正面、左右)を見ながら伐採作業や枝切を行うことで基本操作を学ぶというものだ。「ハーベスタの操作の習得はそう簡単にはできません。両手両足、さらには指をそれぞれ動かす必要があり、初めて乗る方の中には頭が真っ白になる方もいますね。さらにこれまでは、操作を学ぶためにベテランのオペレータから直接指導を受けていたため、その時間の生産能力が減少して非効率的でした。そこで、現場にいなくても、集団で操作を学ぶことができて、かつ互いに技術を共有できるシミュレーター・KF400の導入に踏み切りました」。

(写真:操作を解説する公益財団法人 森林ネットおおいた 河野技師補)

このシミュレーターの活用については、実際には非常に危険な運転も可能という点もメリットだという。「このシミュレーターには転倒するという機能も備わってます。どう操作すると危険な状態になるのかを体験することも可能です。また、一連の作業を終えると、速さ、正確性といった要素を評価する採点が行われます。この採点機能を、ゲーム感覚で皆で競い合うような動きも見られ、安心・安全な操作を楽しく学べる環境がつくられています」。

同シミュレーターの導入は全国で徳島に次いで2例目。全国的にも早くこの機械を導入したことが今後どのような好影響をもたらすのか注目される。「約1時間ほどで基本操作をほぼ完璧に習得される方がほとんどです。また、このシミュレーターの今後の活用としましては、県内の林業事業体にも役立てていただき、さらには子供たちを対象とした体験会なども実施しまして、少しでも林業に興味を持ってもらう活動なども検討しています」。としており、ICTを活用した新型機械の導入が林業の未来を明るく照らしていくと期待したい。

(写真:互いにアドバイスし合いながら効率よく操作を学ぶ)

以下、KF400を体験した研修者談

―搭乗してみた感想を。
研修者 まず、目前の映像が非常にクリアで、本当の機械を運転しているような感覚がありました。頭の上にはカメラマンが付いており、私の動きとリンクして視界が変化したりと、さまざまな工夫が施されていることがわかりました。
―操作は習得できましたか。
研修者 はい、数十分ほどの搭乗時間で基本的な操作はほぼマスターできたと感じています。もちろん実際現場で同様に操作ができるかどうかが重要ですが。しかし私は最近、油圧ショベルの講習を受けまして、その時にいきなり本物の重機に乗ることに若干の恐怖を覚えました。周囲に危険が及ばないかや、力の入れ具合などが不安でした。ですので、このようなシミュレーターで操作をあらかじめ体験しているかいないかでは、覚えるスピードに雲泥の差があるように感じます。とても効率よく学べるのではないでしょうか。
―集団で研修が受けられる点については。
研修者 はじめは講師の方から操作を教えていただいて、頼りきりになっていましたが、操作を覚えた者が次第に増えてくると、仲間同士でアドバイスし合ったり、注意したりすることが多くなり、個人の技術を全体で共有できるようになりましたね。周りに体験者が多ければ多いほど、相乗効果を発揮して早く上達できるように感じます。
―現場で作業を行うにあたっての抱負を。
研修者 このコマツのシミュレーターの経験をもとに実際のハーベスタを使って、高品質な木材の供給を県内はもとより世界へ広く発信したいですね。
―ありがとうございました。

(写真:インタビューにお答えいただいた参加者)

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