寒冷地の高度衛生管理型市場を支える 電動式フォークリフト

歯舞漁業協同組合では、寒冷環境へ対応した特別仕様の電動式フォークリフトが水産物の搬送を担う。

日本本土最東端の漁業協同組合

 北海道東部、根室半島の中央部に位置する歯舞漁業協同組合は、日本本土最東端にある漁業協同組合だ。1912年に前身の組合が設立されて以来、北方領土に連なる歯舞諸島とも歴史的・地理的なつながりを持ち、地域漁業を支える拠点として長い歩みを重ねてきた。現在の組合員数は約740名。漁業生産から流通、金融、資源管理までを一体で支え、地域漁業者の生産活動と生活基盤を支える組織として発展を続けている。

市場業務を支えるフォークリフト

 同組合の市場では、早朝から夜まで水産物が絶え間なく動く。業務は水揚げされた鮮魚の荷受けから始まり、セリの時間帯を除き、水産物の搬入作業が続く。すべての搬入が終了した時点で、その日の業務は一区切りとなる。
 この一連の流れのなかで、フォークリフトは市場運営を支える中核だ。水揚げされた水産物の施設内移動や、セリ終了後に買い受け人へ商品を引き渡す際の搬送に欠かせない。プラスチックコンテナを載せたパレットや、鮮魚を収容した専用タンクなど、大量かつ重量のある水産物を扱う。「フォークリフトがないと作業は進みません。市場を成立させる基盤ともいえる、なくてはならない存在です」と専務理事の中村直樹氏は語る。
(写真:歯舞漁業協同組合
専務理事
中村直樹 氏)

新施設に電動式フォークリフトの導入

 現在、市場施設では、FE25-2を含め、計12台の電動式フォークリフトが稼働している。この導入の背景には、高度衛生管理型市場を中心に整備された新たな市場施設の存在がある。
 同組合では2018年より、「衛生管理機能の高度化」「水産物流通の効率化」「防災・減災機能の確保」「都市漁村交流の推進」の4つをコンセプトに、市場施設の再整備に着手した。高度衛生管理型市場を目指し、「優良衛生品質管理市場・漁港認定」の取得を目標に掲げた。この認定では、大日本水産会が定めた高度な衛生基準に基づき、市場空間の外部環境からの完全隔離と排気を伴う車両の進入禁止が絶対条件とされている。
 こうした背景から、従来のエンジン式ではなく電動式フォークリフトへの転換を検討。コマツと共に電動式フォークリフト導入プロジェクトを進めた。約1年間の調査を経て、寒冷地の市場施設に適した電動式フォークリフトの開発を行い、8台導入へと至った。

厳しい寒冷環境に対応した特別仕様

 一般的な電動式フォークリフトは運転席が開放された仕様で、オペレーターが風雪にさらされる構造となっている。冬季の歯舞地区では体感温度が-15℃以下になることもあり、そのままでは実用に耐えない。そこで運転席を密閉構造のスチールキャブ仕様とし、オペレーターを寒さから守る特別仕様を採用した。
 さらに、低温環境ではフロントガラスの曇りや凍結が発生するため、ヒーターに加え、ガラスの内側の曇りや氷結を素早く除去するデフロスターを装備。寒冷地でも安定して稼働できる環境を整えた。
 一方で、キャブの密閉化や暖房装置の追加は電力消費の増加を招く課題があった。バッテリーフォークリフトFBシリーズでは、急速補充電に対応しておらず、稼働時間の制約からキャブ仕様の実現は難しかったが、FE25H-1では急速補充電が可能となったことで、バッテリー性能の向上と併せ、暖房使用時でも十分な稼働時間を確保できるようになり、キャブ仕様の適用が可能となった。
 オペレーターの市場部 市場二課の山崎真吾氏は「スチールキャブでヒーターも付いているので冬場は助かります。また、電動式は静かなので作業中でもコミュニケーションが取りやすく、指示を出しながら作業できる点も効率化につながっています」と、FE25H-1を高く評価する。

(写真:歯舞漁業協同組合
市場部 市場二課
山崎真吾 氏)

漁業市場の業務に対応した専用仕様

 さらに、漁業市場特有の業務に対応するための専用仕様が備えられている。その代表的な装備が「回転フォーク」と「計量機能」だ。回転フォークにより、荷受けした水産物を収容したタンクの中身を、買い受け人のタンクへと安全かつ迅速に移し替えることができる。また、計量機能により、フォークを持ち上げると同時に重量を計測できる。作業時間の短縮だけでなく、人手負担の軽減や作業動線の簡素化にもつながり、市場業務全体の効率化に貢献している。
 充電器もフォークリフトと同じ8台を設置した。荷受け業務終了後に夜間充電を行い、翌朝にはフル充電の状態で稼働を開始する。通常は夜間充電で1日の業務をまかなえるが、繁忙期など稼働負荷が高まる場面では、急速補充電を併用して運用している。
(写真:回転フォークにより、タンクに入った水産物を別のタンクへスムーズに移し替えることができる)
荷を持ち上げると同時に重量を計測できる計量機能を装備。タンクやパレットの搬送と計量を一工程で行える
電動式フォークリフトの充電作業。夜間充電を基本とし、必要に応じて急速補充電も併用

地域漁業の未来を支える取り組み

歯舞漁業協同組合が目指しているのは、単に市場機能を維持することではなく、地域そのものの未来を支えることにある。若い世代が地元へ戻り、地域産業の担い手として活躍することが、漁業の持続と地域活性化につながる。「地域のため、そして漁業のためにできることを続けていきたい。この新施設がそのための拠点となり、新しい人や取り組みが生まれていく場所になればと思っています。歯舞の漁業を未来へとつないでいくために、これからも挑戦を続けていきたい」と中村専務理事は語る。設備投資、人材育成、業務改革を一体で進めながら、これからも地域漁業の未来を切り拓く取り組みを積極的に推進していく。


2022年に供用開始した高度衛生管理型市場。延床面積約2,600㎡の施設が、水産物流通の拠点として機能するとともに、防災や地域交流の役割も担っている。