「遠隔操作」で多角的な価値を創造

株式会社廣瀨は、より良い現場の実現に向け、業界に先駆けて遠隔操作対応機を土木の現場へ導入。

企業永続の基盤は「信用第一」

 新潟県新潟市に本社を構える株式会社廣瀨。創業は1954年、初代の廣瀬廣政氏が個人で土木業を始めたことがきっかけだ。そのあと、新潟県内で土木工事事業の基盤を築き、1973年には株式会社新潟廣瀨組として会社化、2001年には現在の株式会社廣瀨へ社名を変更した。土木業から始まった事業は現在、建設、不動産、介護福祉など多岐にわたり、廣瀨グループとして地域社会に必要とされる企業であり続けている。
 「私が実質的に事業を引き継いだのは1977年になります。当時は会社の規模も小さく、壁にぶつかることも多くありました。しかし、創業者である父の口癖であった『信用を地道に積み上げていくことが一番大切』という言葉を胸に、会社全体でいただいた仕事を一生懸命やり遂げることで信用を積み重ね、今に至ります」と代表取締役の廣瀬徳男氏は語る。

(写真:株式会社廣瀨
代表取締役
廣瀬徳男 氏)

ICT活用で現場の課題解決に向き合う

 同社のICT活用は、現場で生じた課題を解決しようとする取り組みから始まった。きっかけは、普段の測量作業に不便があるという現場の声だった。そこでドローンを導入し、コマツのSmart Construction Edgeを活用した写真測量を開始した。
 現場での課題を一つずつ解決していく過程で、ドローンによる測量データの活用が進み、掘削量の把握や施工状況の確認など、現場管理の精度向上へとつながっていった。その後は地上レーザーも導入し、三次元測量へと発展。より効率的で高度な施工管理が可能となった。
 こうした取り組みは、特別な理念から始まったものではなく、目の前の課題に向き合い、現場をより良くしようとする姿勢の積み重ねのなかから生まれたものだという。

業界に先駆けて挑戦した「遠隔操作機」の現場導入

 2023年、同社は新潟県の企業で初めてインフラDX大賞を受賞した。しかし、そこで歩みを止めることはなく、遠隔操作システムのIntelligent Circle型コックピットを2台、それに対応するコマツの油圧ショベルPC200-11を2台、本格的に導入した。その背景にあるのは、国土交通省が進めるi-Construction2.0による自動化・遠隔化の流れに加え、展示会や技術発表会などを通じて新しい技術に触れてきた経験だった。
 「技術はすごいスピードで進化しています。だから、私たちが何事も変わらないということは、後退していることと同義だと考えています。新しい技術が出てきたら、まずは見て、触れて、現場で使えるかを考える。それを繰り返しながら次の一歩を選んでいくことが大切だと思っています」という考えのもと、同社では新技術を積極的に取り入れながら、現場に即した活用を模索し続けている。

(写真:本社の執務室内に配置されている遠隔操作システムのIntelligent Circle型コックピットから油圧ショベルPC200-11の操作を行っている様子)

多様な働き方を可能にする遠隔操作技術

 同社では現在、川幅を広げる工事現場で遠隔操作システム対応の油圧ショベルを用いて、掘削した土砂をダンプに積み込む作業を行っている。遠隔操作用コックピットは本社屋の2階に設置されており、中継機を介した通信によって現場の建機を操作する仕組みである。コックピットには必要な情報を確認しやすいよう7つのモニターが配置され、内蔵スピーカーによって現場の音もリアルタイムで把握できる。
 「最初にコックピットに乗って操作した時は、モニターなど実機との違いに戸惑うところもありましたが、遠くにある油圧ショベルをこの場所から動かしているということ自体が驚きでしたし、嬉しさもありました」と笑顔で語るのは、土木事業部 工事システム管理部 ICT推進室の小林氏である。現在は現場担当として、遠隔操作システム対応油圧ショベルの起動準備や作業後の機材の片付け、機体の位置調整などの段取りも担っている。
 遠隔操作はエアコンの効いた屋内で行えるため、気温や砂ぼこり、振動といった負担を大きく軽減できる。こうした環境は多様な人材が建設現場に関わる可能性を広げる。
 「一番助かるのは、自分のタイミングで気軽に休憩を取れることです。実機だと手間を考えて水分補給を控えてしまうこともありますが、遠隔操作ならそれも必要ありません。水分をしっかり取ることもできるので健康面でも良いと思います」と土木事業部 工事システム管理部 ICT推進室の平井氏は語る。
株式会社廣瀨
土木事業部 工事システム管理部 ICT推進室
小林 氏
株式会社廣瀨
土木事業部 工事システム管理部 ICT推進室
平井 氏

遠隔操作コックピットが生む新たな人材の入口

 人材不足という大きな課題に対し、同社は遠隔操作コックピットを解決の“起爆剤の一つ”と捉えている。実際、中途入社の社員である小林氏も、この設備を紹介した地元のネット記事をきっかけに同社へ興味を持ったという。
 「このコックピットには人を惹きつける魅力があります。それは性能だけではありません。外から見えるようにしたり、地元の小中学生の見学を受け入れたり、取材を受けたりと、多くの人に知ってもらう機会をつくっています」と星野部長は話す。
 同社では、遠隔操作を単なる機械としてではなく、多面的な価値を持つ存在として捉えている。それは、すぐに大きな利益を生むわけではないが、企業のブランド力向上や発信力の強化につながる「文化資本」のようなものだ。技術導入をきっかけに人や企業とのつながりを広げ、会社の魅力を高めることで人材を呼び込む。株式会社廣瀨は、そうした好循環の実現を目指している。

(写真:株式会社廣瀨
土木事業部 工事システム管理部 部長
星野正人 氏)

夜間、社屋に面した道路から見える遠隔操作コックピット