柔軟な姿勢でICTの可能性を最大限に発揮する

株式会社東組は、ICT建機の活用で地域の未来を見据えながら、人が輝ける環境づくりに挑んでいる。

海洋土木を中心に社会インフラを構築

 和歌山市雑賀崎に本社を置き、海洋土木を中心とした総合建設企業として展開している株式会社東組(あずまぐみ)。1963年に創業、1964年に法人設立。以来、60年以上にわたり陸と海をつなぐ大規模インフラ整備領域を専門としている。「海の東組」と呼ばれ、浚渫、護岸、防波堤、海底地盤改良といった海洋土木工事を主軸に事業展開しており、全国でも希少な大型サンドコンパクション船や県内最大の起重機船などを保有。また、陸上土木工事にも力を入れており、道路、橋梁、河川、下水道、舗装などにも積極的に取り組んでいる。
同社は持続可能な社会形成に対する意識が高く、1997年にはグループ会社として株式会社和歌山建材リサイクルセンターを設立。廃棄物処理・再資源化を行い、再生砕石などを製造・販売している。自社の再生砕石を活用した土木事業も展開しており、多面的な企業経営を行っている。「海のことも、陸のことも、総合的に対応できるよう環境を整え、地域社会のインフラ企業を目指しています。お客さまからのご依頼には決して“No”と言わず、さまざまなニーズに応えるべく準備を進めています」と代表取締役社長の東宗弘氏は語る。

高いエネルギー効率で旋回動作を繰り返すハイブリッド油圧ショベルHB365

株式会社東組 代表取締役社長
株式会社和歌山建材リサイクルセンター 代表取締役
東宗弘 氏

ICTで効率的な港湾工事を実現

 同社では、既に保有していたPC200にマシンガイダンスを後付けする『Smart Construction 3D Machine Guidance』(以下SC 3DMG、旧名称:レトロフィット)を導入し、港湾工事が多いため防水キット仕様とした。ICT建機を活用することで業務はこれまで以上に効率的なものとなった。その有用性を実感し、翌年には同じくPC200のSC 3DMG取り付け機を導入した。「海や川の中での作業では、水が濁ってバケットの位置を目視できないことがあります。従来は錘をつけた紐を垂らし、水底の位置を確認していましたが、ICT建機であればタブレットにバケットの位置が表示されるため、作業効率が格段に向上しました」と土木部次長ICT推進室長の宮本志郎氏は語る。
 新型のPC200i-12は、マシンガイダンスとマシンコントロールの切り替えが可能で、同社のICT建機の運用スタイルに合致した仕様となっているため、レンタルではなく購入へと舵を切った。
(写真:株式会社東組 土木部 次長 ICT推進室長 宮本志郎 氏)

PC200i-12で快適で効率的な業務を推進

 紀の川の護岸工事では、同社が元請けを務め、グループ会社である和歌山建材リサイクルセンターが下請けとして工事に参画しており、盛土および法面整形にPC200i-12を活用している。「PC200i-12は、旋回スピードを自分好みに調整できるので、ストレスなく思いどおりに操作できます。また、レバーの高さも調整できるので使いやすく、しかもコックピットは広々として快適です。上から送風されるエアコンもいいですね。夏場はありがたいです」と、和歌山建材リサイクルセンター 建設部副課長(マルチクラフター)の靏丸広貴氏は語る。
コックピットにて調整を行う靏丸広貴 氏

ICTを駆使した現場管理と進捗把握

 進捗管理には『Smart Construction Dashboard』を活用。現場の状況を三次元データで可視化できるため、離れた場所からでも進捗を把握できる。「現場の状態がリアルに3Dで再現されるので、とてもわかりやすくて便利です。工事の進捗状況が一目瞭然です。また、それほど規模の大きくない現場であれば、『Smart Construction Quick3D』を使ってスマホで測量を行っています。手軽でスピーディにできるので、こちらも重宝しています」と説明する。同社では、ICTならではの特性を活かし、現場の状況や工事の目的に応じて、最適な方法を柔軟に選んで運用している。

 さまざまな技術を駆使した先進的な施工にも取り組んでいる。特に海洋土木分野では、HB365、PC450、PC350といった油圧ショベルのロングアーム・セミロングアーム仕様を導入している。「これらの建機に水中ブレーカーを装着することで、通常の油圧ショベルでは届かない深い海中においても、水中構造物や岩を破砕し、そのまま船のバケットで撤去することが可能になります。安全性が向上すると同時に、これまで外注していた作業が自社内で完結でき、コスト削減にもつながっています」と土木部次長企画開発担当の岩本元希氏は、同社の高度な海洋土木技術について説明する。
(写真:
株式会社東組 土木部 次長 企画開発担当
株式会社和歌山建材リサイクルセンター
企画・営業部長

岩本元希 氏)

「海の東組」と呼ばれ、海洋土木を中心に事業展開している
濁った水中ではバケットが目視できず、ICT建機がその真価を発揮する

持続可能な社会を目指し、環境負荷低減に挑む

 和歌山建材リサイクルセンターでは、建設系産業廃棄物を適正に処理し、再生砕石(RC-30、RC-40)や再生砂として製品化・販売することで、地域の資源循環を支える役割を果たしている。
 「リサイクル施設として、環境への配慮は当然の使命だと考えています。環境省が策定した環境マネジメントシステム『エコアクション21』の登録認証を取得し、循環型社会の形成に貢献する製品づくりに加え、事業活動全体を通じて環境負荷の低減に努めています」と株式会社和歌山建材リサイクルセンター取締役専務の川端拓氏は語る。
 構内作業では効率と環境性能の両立を目指し、建設廃材の移動作業にハイブリッド油圧ショベルHB365を導入。HB365は旋回を電気モーターで行い、停止時に発生するエネルギーを電力として回収・蓄電する仕組みを備えている。同施設では、HB365は固定された位置で旋回動作のみを繰り返す運用スタイルのため、作業の効率化と燃料消費の抑制を同時に実現している。
(写真:株式会社和歌山建材リサイクルセンター 取締役専務 川端拓 氏)

働く人を主役に、未来への航路を切り拓いていく

 同社では今後、変化の激しい社会環境に迅速に対応していくため、「次世代へのスムーズなバトンタッチ」と「スタッフの更なるスキルアップ」に力を入れている。そしてすべての社員が現場で主体的に動けるように、「職長的な意識」を持てる職場環境づくりにも注力している。
 また、人を大切にする姿勢は制度面にも表れている。男性の育児休業取得を積極的に推進。働く人を主役に据え、現場力と組織力の強化を両立させる姿勢が、東組の継続的な成長を支えている。東組はこれからも、業界の未来に向けて輝ける航路を切り拓いていく。