山口県岩国市で土木建設業を営む株式会社ミヤべ。
同社の宮部範久副社長は、2022年、コマツのグループ会社である株式会社EARTHBRAIN(アースブレーン)から、現場のデジタルツインを実現する「Smart Construction Dashboard」の説明を受け、その場で導入を決断する。それは、社員、そして地元岩国のみならず、「われわれの業界そのもの」を一刻も早く変えていきたいという熱き心に突き動かされての判断だった。
「自身の健康や家族があっての会社」は、ミヤべの企業方針の一つである。同社は山口県の優良企業認定を受けている※1。
完全週休二日制はもちろん、社員育成制度や、バックオフィスの効率化まで、多岐にわたる面で評価された結果だ。取材で訪れたオフィスは、社員たちが自由に使えるパブリックスペースや、カフェカウンターが備えられ、あたかも新鋭IT企業のようだった。
「やまぐち働き方改革優良企業ポータル」では、社員を大切にする姿勢が評価されている
同社では災害現場の状況を最短で把握すべく、2019年からドローンを導入している。当初は、あくまでも現地視察に使う程度で、現場責任者や経営陣はドローンが実務に使えるとは考えていなかった。
そんな折、宮部副社長は、EARTHBRAINから薦められたSmart Construction Dashboardによるデジタルツインが、実務上でさまざまなメリットをもたらすと直感する。「面白いじゃないですか! ぜひやりましょう」とその場で採用を決断した。
取材で訪れた災害復旧現場※2の切り立った崖を颯爽と下りて来たのは、土木部工事課の勢羅満子課長である。元建設コンサルタントである勢羅課長は、測量・設計・施工それぞれの資格を有するスーパー人材。豊富な知識をわかりやすく伝えることにも定評があり、後輩たちにとっては頼りがいのある教師役だ。
「現時点では、DXによるICT測量・施工にはまだまだ課題が残されています。こうした新しい技術を盲信せず、人の知識と実地検証を組み合わせて判断することが不可欠ですし、更にはこの技術に相応しい現場や工種を見極めることが求められます」と勢羅課長は語る。もちろん、危険な現場で活用できる側面も多々あることから、一層の技術革新に期待を寄せる。現場を熟知した厳しい視点に基づいた指摘で、EARTHBRAINの技術を進化させていくという関係式が、未来の現場を変えるDXを生み出していくに違いない。
次号144号では、同社のユニークな人材登用、そしてSmartConstruction Dashboardによるデジタルツインが実際の現場でどのように活用されているのかを詳報します。
※1:「やまぐち働き方改革推進優良企業」として認定。働きやすい職場環境づくり、出産・育児・介護に関する支援、多彩な人材の活用などの評価項目がある
※2:古屋山腹工事現場