人材難が続く建設業界において、2024年4月に残業時間の上限規制が適用される。長年にわたり建設業界の労働問題に取り組んできた芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授は、業界の人材難の問題を解決するためには、「働く人たちにとって魅力的な業界に変えていくことが不可欠である」と語る。その取り組みの一つが「建設キャリアアップシステム(CCUS)」である。蟹澤教授にCCUS誕生の背景と、業界の展望について話を聞いた。
「建設キャリアアップシステム(CCUS)」とは、技能者の資格や現場での就業履歴などを登録・蓄積し、技能・経験が客観的に評価されるようにすることで技能者への適切な処遇につなげる仕組み
日本の建設業は、「付加価値労働生産性」がほかの製造業の半分程度です。発注額が低すぎて会社の利益も少ないのに、多くの人が長時間働いている。私も、発注側に対して、不当なダンピングをやめることや、「働く人を大切にしている企業」の価値を評価することを提言しています。また、目の前の2024年問題に対しては、「稼働率」を改善することが有効だと思います。例えば、DXを使って「現場の見える化」を推進し、非作業、無駄な作業を削減することです。『大地』の読者の皆さんには、土木建設業の方も多いということですが、この領域においてはICTの導入が非常に大きな効果を生むと考えられます。それは、設計変更が少なく、建築などと違い職種も限られているからです。付加価値労働生産性向上の観点からも、ICTの人材難が続く建設業界において、2024年4月に残業時間の上 積極的な導入を検討してもいいのではないでしょうか。
建設業の担い手を確保するには、働き手にとって魅力のある環境を整備すべきです。そうすれば、仕事へのモチベーションが高まり、業界のモラルも向上する。生産性も上がり、企業の売上げアップにもつながる。建設業界全体で労働者の利益になるサイクルを回していかないと、担い手は増えないでしょう。労働環境整備は、働き方改革における義務であると同時に、生産性向上の必須要件なのです。
2024年問題をきっかけに、どのようにすればこの業界を魅力的なものにしていけるか、ぜひ一緒に考えていきましょう。
※1:「建設産業の再生と発展のための方策2011」(2011年7月)
※2:Construction skills certification scheme(建設技能認証制度)