「トルコ・シリア地震」におけるコマツの支援活動

非常事態下で知る「いつもの建機」の底力

2023年2月6日、トルコ南東部、シリアとの国境付近でマグニチュード7.8の地震が発生した。また、その後もマグニチュード7クラスの余震が続いたことで、数十万の建物が損壊。トルコ、シリア両国合わせて約6万人が犠牲となる甚大な被害を受けた※1。地震発生直後、コマツ現地法人KMEのイスタンブール支店(Komatsu Middle East FZE Istanbul main branch)では、自社と現地代理店MDS※2の社員たちの無事を確認。その後、東京のコマツ本社やMDSと迅速に連携し、被災地への経済的・物資的な支援、現地への建機派遣に動いた。
今回は、被災地アドゥヤマンでサブディーラーを経営し、現地でのオペレーター確保や建機稼働の指揮など、支援活動に多大な貢献をしたデュルク氏と、プロジェクトに携わったMDS、KMEイスタンブール支店のメンバーに話を聞いた。
  • ウール・デュルク氏

    サブディーラー・ウムット社※3社長。平時は、トルコ東南部地域を中心に稼働する顧客へのコマツ建機のサービス業に従事。震災時はレンタル機のオペレーションを現場で陣頭指揮。
  • ジャネル・イスタンブール氏

    MDS社の中古・レンタル部門責任者。レンタル機の被災地への出荷をイスタンブール本社より調整。
  • ハカン・アクデミル氏

    MDS社のアフターセールスサポートのエリア責任者。被災地で稼働する建機のアフターセールスサポートに関し、サブディーラーを指揮。
  • ヴォルカン・アルカン氏

    MDS社の地域担当営業。新車販売を通じて被災地の建機需要をサポート。

暗闇と極寒のなかで

地震発生時、デュルク氏は激震地の自宅で目を覚ました。日の出前、停電で暗闇に包まれるなか、家族と共に住まいから飛び出し難を逃れる。2月初旬の早朝、地面には5㎝ほどの雪が積もり、凍てつくような寒さだった。日が昇るにつれ、瓦礫と化した街の様子が徐々に明らかになった。

現地に建機を送る障壁の高さ

地震発生当日から、被災地に建機を派遣するべく、MDSが 政府関係者に連絡を試みたが、混乱のなか実際にトルコの建設機械協会※4と連絡がついたのは地震発生の3日後だった。その後、トルコの緊急時当局※5からの建機派遣の要請に伴い、MDSとコマツの共同で7台のレンタル建機の派遣を決定した。しかし、震災直後の交通網は完全に麻痺しており、渋滞のなかイスタンブールから被災地アドゥヤマンに建機が着いたのは、地震発生から6日目のことだった。

被災者用住宅の準備工事を行うPC290LC

厳しい状況下での「オペレーター付き」の条件

建機の派遣において難題となったのが、建設機械協会が「オペレーター付き」を条件にしたことだ。そこで、通常オペレーター手配を行っていないMDSは、現地での活動の陣頭指揮を依頼していたデュルク氏に相談。デュルク氏が日頃の取り引きで絶大な信頼を得ていた地元企業から、オペレーター派遣の協力を得ることができた。

過酷な環境と人員確保の苦難​

建機での作業は、まずは瓦礫の下に埋もれた人たちの救助だった。困難な作業なのはもちろんのこと、悪天候で極寒の環境下、デュルク氏とオペレーターたちの宿泊場所も確保できない状況。やむなく、用意したミニバスで宿泊するも、地震発生後10日間ほどは、水も食料も救援物資も不足していた。このような過酷な状況に耐えきれず、辞めてしまうオペレーターが続出したが、デュルク氏は常に補充要員を探し、皆のモチベーションを保つことに力を注いだ。
 

「いつもの建機」の底力を知る​

日頃からコマツ建機を扱ってきたデュルク氏だが、今回の支援活動で改めてその耐久性を目の当たりにした。馴染みの建機が、災害時の過酷な状況で30日間稼働し続け、ほとんど壊れることがなかったのには驚いたようだ。また、MDSと KMEイスタンブール支店のメンバーも、デュルク氏を通じて被災地での建機の稼働状況を知り、日頃、採石場や採掘場など、ハードな現場でコマツの建機が評価されていることの意味を実感したという。

震災で壊れた道路の修復に当たるD85EX

強靭な国土を築く一助に​

地震直後は、飲食物も電気もない状態だったが、ほどなくしてトルコ全土、そして世界中の支援団体から、豊富な物資が届くようになった。人々の優しさに涙するほど感動し、またトルコという国に誇りを持てるようになったと、デュルク氏とMDSメンバーは語る。一方、亡くなった大勢の人々のことを思うと胸が張り裂けそうになるとも。今後は、さまざまな災害に負けない「強靭なトルコ」を創る一翼を担いたいとメンバーは語る。

【コマツの災害支援】

今回のトルコ・シリア地震において、コマツは被災地への救援活動に必要な建設機械の無償貸与や、寄付金による支援を行いました。世界の各地でこのような災害が発生した際、コマツは自社の事業の強みを活かし、まずは建設機械や発電機などでの支援を検討します。今後も災害発生時は、各地の代理店と連携し現地のニーズを確認しながら、自社の製品とサービスで支援を行いたいと考えています。

オンライン取材時の様子。左から、MDSのアルカン氏、KMEイスタンブール支店の原 理之マーケティングGM、ムラット・ウステ(マーケティングマネージャー)、ウムット社のデュルク氏

※1: 日本赤十字社ホームページ「2023年トルコ・シリア地震救援」より
※2: Marubeni Dağıtım ve Servis A.Ş.(丸紅ダイトゥム・ヴェ・セルヴィスA.Ş.)
※3: Umut İş Makinaları Ltd.Şti(ウムット・イシュ・マキナラリ株式会社)
※4: 3日後、建設機械協会は政府代表に直接連絡し、追って協会会員に通達
※5: AFAD(トルコ災害緊急事態管理局)