Daichi Report

小規模土工におけるDXの可能性を広げる​ ーSmart Construction Quick3Dー 求めたのは究極の使いやすさと手軽さ

138号では、CSPI-EXPO 2022で展示されたSmart Construction Quick3Dを中心としたラインナップを紹介した。今号では、開発プロジェクトに携わった株式会社EARTHBRAIN DXセンターのメンバーから話を聞くことができた。
コマツDX部門生え抜きの若手と、DX普及教育のプロフェッショナル、建設コンサルの経験を持つディレクター、まさに、“ブレイン”の名にふさわしい、多彩な人材が集まって、Smart Constructionは世に送り出されたのである。

小さな変化を捉えるニーズが着想の原点

「最近、ゲリラ豪雨や台風が増えて現場の状況が急に変わることも多くなっています。小規模土工の現場では工事後にチャッチャッと3次元データとしてとっておきたい、というニーズがあったわけです」と番上氏は語る。従来のドローンやレーザースキャナーでのデジタル化では、準備や手配に相応のコストがかかり、こうしたニーズを満たせなかった。現場を止めずに、日々の小さな変化を刻々と残すには、「監督さんがサッと計測しちゃう」くらいの手軽なものでなければいけない、という思いが原点にあった。
DXセンター  藤岡誠 氏

コマツレンタル(株)時代からドローン測量などSmart Constructionの普及教育に携わる
DXセンター  手島光基 氏

2020年コマツ スマートコンストラクション推進本部のDXセンターに新卒入社
DXセンター ディレクター  番上勝久 氏

コマツレンタル(株)時代からSmart Construction開発に貢献。その前職では
建設コンサルとして20年のキャリアを持つ

劇的なコスパと使いやすさを​

 「ドローンやレーザースキャナーを導入するとなれば、数百万、数千万といった単位の費用がかかってしまうこともありますよね。しかしiPhoneであれば、手持ちのものとか、新たに購入しても15万円程度。お客さまからは、3D地形データ作成のハードルが下がったという感想をいただきます」と手島氏。
藤岡氏は、「日々手軽に点群データをとるためには、コストのみならず、すぐに使えるものである必要があったので、普段、写真を撮ったりしているiPhoneが最適だったわけです」と続ける。
専用の機器ではなく、普及機をデバイスにしたことで、小規模土工でも導入しやすい仕組みを提供することができた。

導入企業から続々届けられる声​

2022年7月にリリースされたSmart Construction Quick3D。導入した企業からは「こんなに簡単にできてしまうのか」といった声が寄せられている。「日々の施工が終わったあと手軽に現場を点群データ化、そのデータをクラウドにアップロードすることで3D地形データを現場関係者全員で視覚的に素早く共有できた」という声や、「Smart Construction Dashboard※との組み合わせで、会合ができないコロナ禍でも、刻々と変化する現場についてリモート会議で話し合いができた」という意見もあった。
  • 普段使い慣れているタブレットだからこそ、手軽に現場を確認できる
  • これまで二人でやっていたことを一人で。軽量・低コストのSmart Construction Roverの活用により、測量に関する作業人員も削減
  • コンパクトで手軽なパッケージで、作業員一人でも手軽に測量できることを目指した
  • Smart Construction Dashboardはさまざまなソリューションのハブとして機能していく

ニーズの多様化に向けて​

小規模土工での活用も期待されるSmart Construction Quick3Dだが、建築業界におけるBIM/CIM(3Dデータを基軸とした建設生産管理)にも応用ができる。例えば建築現場でSmart Construction Quick3Dを用いて、補修部分の証跡を残す、といった活用法だ。
また、管工事でも、掘り起こして土に埋め戻す作業の際、そこに埋まっているという証跡をとるのに3次元の計測は活躍しそうだ。既に、北米やヨーロッパなどでは、住宅地の土地造成の現場に向けてSmart Construction Quick3DとSmart Construction Dashboardのソリューションを紹介し始めている。「過去にさかのぼって、いつここに設置したかというのも振り返ることができます」と藤岡氏は語る。

Smart Construction Dashboardをハブとしたソリューションの拡充は続く

ユーザーの声を徹底的に検証し、Smart ConstructionDashboardを中心とした一気通貫のシステムを提供、U( I ユーザーインターフェイス)を統合して、現場の効率化と安全性や環境適応性の向上につなげるべく、同社の取り組みは続く。
iPad、iPhoneはApple Inc.の登録商標です。 ※iPhone商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。

【Smart Construction Quick3D】スマホやタブレットで点群データを瞬時に生成。

LiDARスキャナとカメラを搭載されたスマホやタブレットで高精度な点群データを生成することができる3次元測量アプリ。小規模現場の出来形管理要領に準拠した点群データを瞬時に生成。