求められるのは安全に素早く業務を行うこと

高度経済成長期の建築物を中心に年々需要が増える解体。追い風市場における同社のビジョンと課題に迫る。

足場と解体をワンストップで提供

 大阪市此花区で解体事業を展開している有限会社松井建設。代表取締役社長は創業者の松井正彦氏。2006年に足場工事の会社としてスタートした。現場と関わっていくうちに、大きな機械を扱う解体のダイナミックさに魅力を感じるようになり、解体業務へと事業領域を拡大していった。「解体は危険を伴う大変な業務です。日々真剣に取り組んでいますが、どこかロボットを操縦するようなワクワクする感覚があります」と松井社長は解体の魅力を語る。足場と解体の工事を一手に請け負う会社は少なく、これが同社の強みにもなっている。

解体現場は常に危険と隣り合わせ

 解体業務を始めるにあたって、建機の導入はまずリースで対応した。仕事が評価され、業務量が増えていくにつれて、小さい建機から購入するようになった。コマツとの付き合いは、2018年のPC138US-11の導入からとなる。「コマツの建機は乗りやすいですね。機械が滑らかに動くし、パワーも申し分ないので、自分がイメージしたとおりの作業ができます。故障も少ないですし、仮に故障しても、対応が早いのでとても助かっています」と松井社長はコマツを評価する。

 解体現場では、大きなコンクリートの塊が落ちてきたり、むき出しの鉄骨が至る所にあったり、多くの危険が潜んでいる。イメージどおりの作業を実現する優れた操作性は、作業効率を向上させるだけでなく、現場での安全確保にも大きく貢献している。

コマツと共同で建機を開発

 同社とコマツとは強いパートナーシップで結ばれており、建機の開発を共同で行う側面もある。これまでには、中層建物の解体に適した作業性を実現する「PC228USLC-11 解体2ピースブーム仕様」などが開発されていて、今回取材に伺った現場でも、共同開発による建機が使用されていた。

 地震大国日本では建物の耐震性が重要視され、日本独自のSRCという構造の柱が用いられることがあるが、抜群の耐震性を発揮する一方で、解体には労を費やす。日本の各地で、このSRC構造の建物が狭小な敷地に建てられている。建機に求められるのは、SRCを圧砕できるパワーのあるアタッチメントと、狭小な現場でもスムーズに稼働することができるコンパクトな機体。アタッチメント部が大きくなると、安定性確保のために機体も大きくなるが、大きすぎると狭小な現場では思いどおりに稼働しない。この絶妙なバランスを追求して共同開発されたのが、PC450LC-11の大型アタッチメント装着可能作業機、通称MRD仕様となるマルチ解体仕様車だ。アタッチメントの大割圧砕具は開口幅1,600mmと大きいが、アーム部は小さな機体でも安定性が確保できるよう、ミドルレンジとなる21mとした。

SRC構造の柱は大きな圧砕具が付いたMRD仕様車で砕いていきます。鉄骨をむき出しにしたところで、そこをロングフロント仕様車(アーム部が28m、開口幅が1,100mm)で切っていきます。仕様の異なる2台のマルチ解体仕様車を使うことで、効率的に業務を行っています」と松井社長は共同開発による建機での作業について語る。

コマツの営業担当と建機に関するディスカッションを行う松井社長

2台の建機が絶妙なコンビネーションで解体業務を進めていく

解体に明確な「正解」はない

 解体業務では、実際に外装材や内装材を外して初めてその建物の構造が見えてくる。現場を任される解体業者には、状況に応じた的確な対応が求められる。「解体業務の進め方には『これが正解』という手法はありません。キレイに安全に素早く終われば、それが正解なんです。正解に導くためには、機能にゆとりのある建機が必要になります。ワンクラス上の機能性を持った建機で、無理をせずに安全に作業を進めることが大切です」と松井社長は解体業務の「正解」について解説する。

 また、解体業務は人が暮らしている生活圏で行われることが多く、近隣住民にとっては騒音や振動などが迷惑になる場合がある。いかに地域社会と良好な関係を築くかも、解体業者に求められる重要なことだ。同社は、毎朝現場付近の清掃や近隣住民への挨拶を徹底するなど、地域住民との関係性構築に励み、かつスピーディーに工事を終わらせることに注力している。

課題は定着しない人材

 同社にとって一番の課題となっているのが人材の確保だ。順調に業績を伸ばしているだけに、フレッシュな人材を採用し、更に事業を拡大したいところだが、なかなか思いどおりにはいかない。自分で考えて現場でテキパキと働く優秀な人材は、独立を志向し辞めてしまうことが多い。また逆に、積極性に欠ける人材は、現場の動きについていくことができず、結局辞めてしまうという。「毎年、一定人数を採用したいのですが、なかなか集まらないですね。経験のある方だと、当社のやり方と合わないこともありますので、できれば未経験でやる気のある方を採用していきたいです」と松井社長は採用について話す。

オンリーワンの解体業者を目指す

 解体はリサイクルと近い業務だ。解体によって発生した瓦礫は、すべて「有価物」「無価物」に分別され、適正に処分されることになる。企業活動自体が、社会全体の取り組みであるSDGsに直結している。また、同社においては、効率的でスピーディーな解体業務を実施しており、建機の排ガスの低減も実現している。

 地域社会と良好な関係を築きながら、持続可能な社会の実現に貢献している松井建設。今後はこれまでに培った経験を活かして、まだどこにもないオンリーワンの解体業者を目指していく。


コマツ PC450LC-11 大型アタッチメント装着可能作業機のご紹介

PC450LC-11 大型アタッチメント装着可能作業機(MRD仕様)のご紹介です。

<アタッチメント装着可能質量>
5,000kg(21m仕様時)
5,310kg(18m仕様時)

解体ロングフロントよりも2クラス上のアタッチメントを装着可能! 解体現場の生産性向上に寄与します。