上海からも東京からも1,000㎞。アジアと日本をつなぐ拠点となる北九州。ここには、「門司港」「小倉港」「洞海港」の3つの港があり、それらを総称して「北九州港」という。そのなかでも、モダンとレトロが融合し、観光スポットとして名高い門司港。門司港で物流の起点となる事業を展開しているのが門司港運株式会社だ。「『海運』と『陸運』の間にいるのが『港運』。我々の仕事は船会社と荷主をつなぐことです」と代表取締役社長の野畑昭彦氏は自社の事業について語る。
門司港運の始まりは戦中の1942年、当時の関門港の船内荷役業者50社が統合して設立された、関門船舶荷役株式会社だ。その後、1950年に門司港運株式会社と改称し、港湾運送事業全般にわたる営業を開始した。現在は、「港湾運送業」「輸出入取扱業」「倉庫業」の3つを柱に、事業を展開している。
同社では北九州市門司区を中心に合計で14カ所の倉庫を構えている。倉庫で活躍する荷役機械は71台にも上る。「コマツの機械は22台あります。問題が起きてもスピーディーに対応し、改善策をともに考えてくれるので、パートナーとして信頼しています。今後も、安全な作業をサポートする信頼性の高い機械を開発してほしいです」と野畑和彦取締役はコマツに期待を寄せる。
同社倉庫部が扱う主な品目は飼料だ。倉庫課ではグルテンフィードと呼ばれるトウモロコシを原料とした畜産飼料と、魚粉を原料とした水産飼料を取り扱っている。それらの移動に使用される荷役機械がフォークリフトだ。ショベルローダーやヒンジなど用途に合わせ、アタッチメントを変えて作業に使っている。
以前はエンジン式フォークリフトを使用していたが、飼料を扱う倉庫では、エンジンの排ガスが粉塵を巻き上げる。粉塵はラジエーターの目詰まりを起こし、オーバーヒートやオイル漏れなどの原因となっていた。また、排ガスや舞い上がる粉塵は、オペレーターの健康にも影響を及ぼす恐れがあるなど、問題を抱えていたという。
「コマツの展示会でFE25と出会い、電動式ならではの機能に関心を持ち、デモ機を試用しました。実際に耐塵性と作業性を確認すると、エンジン式とは異なり、粉塵を巻き上げないので、当社の作業には向いており、購入することにしました。エンジン式に比べパワーが劣るのではと危惧していましたが、まったく問題ありませんでした。操作も楽で、オペレーターへの負担が大きく軽減されました」と倉庫部倉庫課課長の安永隆彦氏は電動式フォークリフトへの信頼を語る。
門司港運株式会社 倉庫部倉庫課課長 安永隆彦 氏
夏場の室内作業は、室温が40度を超えることもある。その状態でエンジン式を使用すると更に温度が上がり、より苛酷な作業環境となる。その点、電動式は排熱がないので、粉塵の巻き上げの抑制と相まって、劇的に快適な作業環境へと変わる。
また、従来機種のFE25-1から新型機種のFE25-2へのアップグレードも作業の効率化を推進したという。「走行性能がだいぶパワーアップしました。また、バケットを差し込めなかった分量も差し込めるようになり、充電もワンタッチでできるので楽になりました」とオペレーターの矢野大地氏は言う。
充電中のFE25-2
FE25-2で作業効率が向上したと語るオペレーターの矢野大地 氏
トラブル時だけでなく、メンテナンス対応に関しても、コマツへの評価は高い。同社では、機械の稼働状況を遠隔で確認できるシステム「Komtrax」によるレポートを定期的に入手し、機械のメンテナンスに活用している。「機械の稼働状況だけでなく消耗品の交換時期なども事前に情報提供されるので、常に万全の体制で業務にあたれます」と、安永課長はKomtraxのメリットを語る。
北九州市門司区太刀浦海岸にあるコンテナセンターでは、空コン(中身が空のコンテナ)の管理を行っている。搬入されたコンテナは同社の検査員がチェックを行い、検査をクリアした空コンは所定の場所に設置される。荷役機械としてはサイドスプレッダーが使われ、コマツのF5ECS-1とコネクレーンズのSMV 5/6 ECC90の2台が稼働している。
小回りが利き効率的な業務を推進するコネクレーンズ SMV 5/6 ECC90
以前使っていた製品はマストチェーンが数回切れるなど不具合が多発しており、業務改善のために新たな機械を購入することになった。製品選定では、チェーン強度などの信頼性と作業効率の観点からコマツ製品に決まった。「作業がスムーズにできる、とオペレーターからの評判は上々です。以前のコマツ製品と比較しても効率が上がっています」と、コンテナセンター課長代理の片山浩氏は語る。
当初コンテナセンターでの荷役機械はコマツ製品の1台体制で進める予定であったが、需要の高まりから、負荷軽減を目的に2台目を購入することになった。「2台目はコネクレーンズ製を購入しました。2台体制となったおかげで、業務にも余裕が生まれ、機械も長持ちなので、トータルでみるとコスト削減だと思います」と片山課長代理は説明する。
同社では、カーボンニュートラルの実現およびSDGsの推進を踏まえ環境対策を進めている。2009年にグリーン経営の認証登録をし、2021年に北九州SDGs登録事業者に登録した。省エネ、省資源の推進、廃棄物の削減などに積極的に取り組み、地元北九州への地域貢献にも力を入れている。
また、野畑社長は、「コロナ禍を受けたニューノーマルな働き方を推進しつつ、同時に『人対人』のコミュニケーションも大切にしていきます。社員は会社の歯車ではありません。社員あっての会社です。一人ひとりがやりがいと充実感を持って働けるようサポートしていきます」と企業のあり方を語る。
門司港運の社訓のなかに「一致協力して、愉しく働く」とある。地域や自然環境に根ざし、一人ひとりが「愉しく」働く企業が門司港運だ。今後も地域を活性化し、次世代へと「愉しさ」をつないでいく。