先見性と地域への感謝の思いが融合

※ 本誌の写真は安全に配慮された場で撮影されたポージング用写真となります

レンタル業と木材業を柱に多彩な事業を展開する株式会社大紀。先見性と地域への思いがビジネスの可能性を広げる。

優れた先見性で建機レンタルを開始

「当時は、土木工事に使用する建機をレンタルで貸し出すという発想は、この業界にはまだありませんでした」と語るのは、株式会社大紀代表取締役の清水益成氏。優れた先見性と実行力で1973年から建機のレンタル業をスタートさせた。まだ、「建機のレンタル」というビジネスモデルが業界に定着していない時代、画期的なサービスであった。これがヒットとなり、着々と業績を上げ事業を拡大。1983年に大紀リース株式会社を設立、2001年に株式会社大紀へと改組した。「当社は、ただ単に商品を提供しているわけではありません。お客さまのご要望にあったアイデアや独自のノウハウなど『情報』を提供しているのです。それがレンタル会社の役割です」と事業を展開する上での基本的な考え方について話す。

地域社会の活性化にどう貢献するか

 現在は建機のレンタルだけでなく、地域社会のためにバス会社、タクシー会社、運輸会社、そして環境保全に貢献する木材業、農業、リサイクル業など幅広く事業展開している。清水社長は一代でこれほどの規模へと会社を拡大させていった。誰もが認めるのは、独自の視点でビジネスシーズを見つけ出す清水社長の優れた先見性だ。この先見性がビジネスの推進力になっていることは間違いないが、根底には地域社会に対する感謝の思いがあるという。「私たちが生活している奈良県吉野郡下市町は人口およそ5,000人の小さな町です。当社の事業は地域の人に支えられ、教えられ、生まれたのです。この町のために何ができるのか。地域社会の活性化および持続可能な社会の創造に寄与することが、当社の使命だと考えています」と清水社長はビジネスのあり方を語る。

400台を超す豊富な数の建機を保有

 同社のメインの事業は建機のレンタルだ。保有している建機の台数は400台を超え、西日本でもトップクラスを誇る。時代のニーズに対応しICT建機を多く取り揃えている。マシンコントロール建機だけでなく、最近はマシンガイダンス機能などのICT機能を後付けで提供する「レトロフィット」を装着した建機が23台となっている。

 顧客となる企業は自社で建機を保有していない中小企業がほとんどで、ICT建機に対する知識や理解も十分でないことが多い。そこで、同社では2015年にICT建機の試乗ができる飛鳥テクノセンターを開設した。ここでは、実際にICT建機に乗って操作し、その利便性や安全性を体感することができる。

環境建機も豊富な品揃えとなっている

お客さまに寄り添ったサポート体制

ICT建機は経験の少ないオペレーターでも、熟練のオペレーターと同じように作業ができます。人数の少ない中小企業こそ、ICT建機に対するニーズは高まりますが、体験する機会が少ないのが実態です。そこで、当社がICTの利便性や安全性を知っていただく場を提供しています」と専務取締役の田中照浩氏は飛鳥テクノセンターの意義を説明する。

 レンタル契約を結んだ顧客からは相談も多く、窓口となっている情報化施工ICTチームの西上雅博氏は「お客さまのお困りごとには迅速に、すべてワンストップで対応しています」とサポート体制について語る。

 そんな同社のサポート体制をバックアップしているのがコマツだ。コマツでは同社より連絡があった場合には、当日対応を目指し、迅速に機械の修理および部品の交換を行っている。大紀もコマツも、「工事を止めない」ことが共通の方針だ。

株式会社大紀 情報化施工ICTチーム 西上雅博 氏

生活者の「足」としての地域貢献

 生活者の「足」となる観光事業も手掛けている。マイクロバスから、小型・中型・大型の観光バスを完備し、旅行手配、および貸切バス事業を展開。バスが1時間に1本しかない、交通の便の悪い地域があることから、スクールバスによる児童の送迎や冠婚葬祭の送迎など、大手観光業者にない地域密着型のサービスを展開している。

株式会社大紀 取締役副社長および大紀観光株式会社 代表取締役 清水徹 氏

約10年前に木材業に参入

 レンタル業と並ぶ、もう一つの柱が木材業だ。約10年前に参入し、県内で唯一国産の杉とヒノキを使用したラミナ、チップを生産している。

 同社では需要の高まりを受け生産体制の機械化を進めており、グラップル装着のPC78USやグラップルソー装着のPC120、そして電動式フォークリフトFE25やエンジン式フォークリフトFH40など、コマツ製品を積極的に導入している。

「屋外でも使えて、更に排気ガスを出さないFE25にはとても助けられています。大型の木材や丸太を運ぶ際にはFH40を使用しています。納期に間に合わせるためには生産設備を常にアップデートし、急な注文にも対応できるよう、余力ある生産体制を整えています」と木材事業センターのセンター長大塩隆也氏は言う。

株式会社大紀 木材事業センター センター長 大塩隆也 氏

廃材が原料のリサイクル事業を展開

 また、同社内にはグループ会社の株式会社中吉野開発リサイクルセンターが運営するリサイクル施設を設けている。木材事業におけるラミナ、チップの製造時に出る廃材や近隣の林業業者の伐採木を受け入れ、自走式木材破砕機BR200Tによりチップ状に細かく破砕し、バイオマスボイラー燃料やチップ堆肥として出荷している。

「当社ではずいぶん前からリサイクル業に関心があり、1992年に環境先進国であるドイツに視察に行き、リサイクルの重要性を認識しました。当時コマツではまだ木材破砕機を製造していなかったため、コマツに協力してもらい海外から機械を輸入しました。また、阪神淡路大震災を契機とした建設リサイクル推進もあり、レンタル需要の拡大を見据え、1995年に自走式破砕機BR300J10台、1996年にBR350JG18台購入しました」と取締役副社長の小西義一氏は、リサイクル業について語る。

すべての事業は地域活性化のため

 地域社会が何を求めているのか。その問いに真摯に向き合うことで、地域社会の活性化につながる多彩な事業を展開している大紀。その活動は、豊かな地域社会づくりに貢献し、地元に新たな雇用を生み出している。

 未来を鋭く見つめながら、地域社会のために行動を起こす。真の地域密着型企業とは、優れた未来志向型企業なのかもしれない。