日本国内はもとより、アジア・アフリカ地域などで現地の社会インフラ整備に貢献している、三重県桑名市の水谷建設株式会社。創業は1933年、設立は1960年と、長い歴史を誇る。創業当初は、山を購入して土砂の採取販売を行っていたが、やがて土木工事を行うようになった。現在では、自社で保有する600台以上の各種建機を駆使し、大規模土木工事を中心に手がけ、サブコンとしての業務をメインに幅広いニーズに対応している。
コマツとの付き合いは古い。現在、HM400-5を約50台、HD465- 7E1を約30台、その他にも多数のコマツの建機を保有しており、コマツ機の比率は4割を超える。「コマツの建機は、エンジンやトランスミッションなど、耐久性があり故障が少ない。機械が止まらないということは、工程が守れるということです。計画通りに業務が進むので助かります。パワーがあって、荷もたくさん積めるのに維持費がかからない。とても信頼しています」と水谷建設代表取締役社長の水谷秀雄氏は語る。
水谷建設では数多くの建機を自社で保有しているため、下請け業者を使うことなく、ほとんどの案件を直営で行っている。また、建機の組み立てやメンテナンスも自社で行い、機械の故障があっても、その場でスピーディーに対応、リカバリーも早くできる。特に海外工事の場合、トラブルが発生するとそのための対応に必要以上の時間を要することも多いが、水谷建設では現地の業者に頼る必要がないため、時間的なロスも少なくすむ。
多くの建機を自社保有することで、水谷建設は日本においても独自のポジションを築き、事業拡大を実現してきた。
ICTの取り組みに関しては、サブコンの中でトップクラス。最初の導入は2015年の八ッ場ダム工事に参加したのがきっかけだ。崖があり草木が生い茂る山中での工事のため、丁張の設置ができずにICTで行うしかなく、必要に迫られる形でICTを導入することになった。
今や現場ではICTが欠かせない存在となっている。例えば100㎡の土地をブルドーザーで整地作業する際、従来は1日目に測量をしてから粗掘削をし、2日目に再度測量をして精度の高い掘削を実施、そして3日目にようやく整地作業となる。ところがICT建機であれば、測量の必要がないため1日で整地が行える。「測量待ちの時間がなくなりました。測量は時間がかかりますし、その間、機械を入れることができません。このロスタイムがなくなったのは作業の工程上とても大きな意味を持ちます。さらに、人と機械が近づく丁張作業においては危険性を低減できたのも大きいです」と執行役員事業本部工務部長水谷信夫氏は語る。
ICT建機をバランスよく業務に組み込み、有効に使うことで、作業の効率と精度が向上する。しかし、ICTに頼りすぎずにバランスを保つことも大切だと水谷部長は言う。「深く狭い谷では、GPSが入らないためICT施工ができなかったことがありました。ICTは確かに業務の効率化を実現しますが、万能ではありません。現場を見極め、状況に適した施工計画を立て、業務にあたる必要があります」。
水谷建設では工事を行う前に、ICT技術を現場にフィッティングするために、コマツの主催によるDXカンファレンスという検討会を実施することがある。実際の現場の図面や状況を踏まえて、お客さまの意見を基に、デジタル技術を活用し施工計画の協議を行うものだ。「コマツはICTに関してはとても進んでいます。ICTの最先端の情報が聞けるのは有益ですね。また、工事の計画立案にも役立つので助かっています。特に大きなプロジェクトが始まる前には、一緒に考えを出し合い計画をつくっていきます」と常務執行役員事業本部機械部長の一村敏金氏は語る。
また、DXカンファレンスの開催だけでなく、コマツの営業体制にも信頼を寄せている。「ICTや建機のことについて十分な知識を持った社員の方が、とても親身になって相談に乗ってくれます。現場のことがよくわかっているので話がとても早い。いろんな情報を共有し、スピーディーに動いて当社の運営をよくサポートしてくれています」と水谷社長はコマツの営業体制に太鼓判を押す。
土木業界への入社を希望する若い人の中には、大きな建機を操作してみたいという人が多くいる。ところが、これまではある程度の経験と技術が必要となるため、その過程において辞めてしまう人も多くいた。ICTであれば、基本的なことをマスターすれば、経験が少なくても大きな建機を操作することが可能だ。水谷建設でも入社1年目の社員がベテランのオペレーター同様に作業をこなしている。「当社ではICTがスムーズに定着したことで、採用にもいい影響が生まれています。社員にも多様性が生まれ、風通しのよい快適な社内環境となり、定着率も向上しています」とICTと人材との関係について水谷社長は語る。
世界を舞台に活躍してきた水谷建設だが、今後はより地域社会に根差した事業展開を増やしていく予定だ。「今後は地域社会に貢献するため、地元採用を増やしたり、地元の工事案件も増やしていきたいです。桑名水郷花火大会への協賛やFC.ISE-SHIMA(サッカークラブ)とのホームゲームパートナー契約なども行っています」と水谷社長は地元桑名への貢献に意欲的だ。世界で活躍するグローバルな企業は、次のステージへと動き始めている。