ICTによってどれほど効率化が進んだのか、従来の作業との比較でその差を見てみよう。
従来の法面整形であれば、事前調査測量に2名、丁張設置に2名、オペレーター1名、そしてその他手元作業員が2名おり、およそ7名前後で作業するのが通常であった。
ICTを活用すると、図面データにより作成された3次元データとローカライゼーションされた基準点データを建機に落とし込むことにより、丁張設置を行う必要がなく、オペレーター1名が現地で業務を行えば完結するのだ。人件費と作業日数の大幅な削減を実現するとともに、業務負担を伴わない高精度な施工が可能となる。
オペレーターの香田清貴氏は「法面の高さや勾配をセットすれば、あとは機械の方でデータ通りに作業してくれます。これまでは作業する時、建機から降りて現場を自分の目で確認していましたが、乗り降りの手間がなくなります。作業も快適にスピーディーに行うことができ、大幅な業務効率の向上を実現しました」とICTの有効性を語る。
また、道栄重機ではすべての建機がICTではないため、ICT建機で約20mおきに目安となる作業を先に行い、それを基準に従来機が残りの作業をするといった施工上の工夫をすることで、ICT建機も従来機もしっかりと活かしている。ICTに慣れていない年配のオペレーターも1度使うと、「もうICT建機しか考えられない」とその有効性を実感している。
オペレーター 香田清貴氏
現在、ICTを使った業務は社内にすっかり定着しているが、その背景には鎌田社長の尽力がある。「最初はコマツレンタル道東からレンタル機を借りて使っていましたが、それではいつまでたっても当社の技術として身につかないと考え、購入して使いこなすことにしました。まずは、私が率先してPC 200i-11に乗って操作に慣れることにしました」と鎌田社長は当時を振り返る。そして導入期の不安を解消したのがコマツのサポートだったという。「とにかく、分からないことはなんでも聞きました。サポートセンターの方は『まず、このボタンを押して、その次にこの操作をします……』と、とても具体的かつ的確に指示をくれるので、本当に助かりました。このサポートがなければ、これほどのスピードでICTが社内に浸透することはなかったと思います」。現在では、鎌田社長がサポート役となって、現場のオペレーターの質問に答え、スムーズな業務とICTの浸透を支えている。