持続可能な社会の実現を目指すこれからの林業のカタチ

林業だけでなく、リサイクル事業や地域振興事業など、「木を伐る」ことを中心に幅広く事業展開している山田林業。常に社会のニーズに対応し、独自の視点で築いてきた経営スタイルからは、これからの林業のカタチが見えてくる。

時代に合わせて柔軟にスタイルを変える

創業は1965年、50年以上の歴史を誇る株式会社山田林業。
代表取締役の山田輝幸社長は3代目となる。
山田社長の父にあたる先代までは、林業一筋に展開してきたが、山田社長が引き継いだ頃から、林業が衰退の時代に差し掛かり、このままではいけないと「木を伐る」ことを中心に据えながら、新たな領域へと事業拡大を果たした。

現在、売り上げの7~8割を占めているのが伐採工事だ。
道路敷設や宅地造成などに伴う土木工事に関する伐採工事で、1990年代の初めに東海環状自動車道(通称MAGロード)の工事に携わったのが始まりだ。
その際、初めて建機を使用して利便性を痛感。
その後、コマツPC120を購入し、以来現在に至るまでコマツオンリーで建機を導入している。

(写真:株式会社山田林業 代表取締役 山田輝幸氏)

リサイクルや地域振興と幅広く事業展開

 山田林業が伐採工事を始めた当時は、廃棄された伐採木や木くずを野焼きすることが一般的であったが、大気汚染などの環境問題により野焼きが禁止されるようになる。そこで、同社は産業廃棄物中間処理許可を取得。コマツBR200Tを導入しリサイクルプラントをつくり、自社の伐採木はもちろん近隣の造園業者の剪定枝なども受け入れ、バイオマスや肥料の原料となるチップを製品化。環境負荷を低減させるバイオマス発電などで再利用されている。

 また、地域活性に貢献するためにカフェ「モンタナ」を運営するなど、地域振興事業にも熱心だ。林業を中心としながら、自然環境保全と町づくりへと事業を拡大。持続可能な社会の実現を目指す企業としての姿が見えてくる。

自走式木材破砕機BR200Tで木くずをチップ化
チップ化された木くずを運搬するWA100
店内は木の香りに包まれる、カフェ「モンタナ」

全国の大学生から多数の応募

 従来の林業の枠には収まりきらない先見性と溢れるバイタリティーを持つ山田社長。採用に対する考え方も大変ユニークだ。2021年度の新卒採用では、女性2名、男性1名を採用。うち女性1名を同社では初めて現場採用(伐採作業や重機操作など現場での作業を前提とする採用)した。これまでは知り合いのつてで社員を補充していたが、2020年度に就職サイトを活用。「私の息子と専務(山田社長の弟)の息子が入社し、将来を担う若い世代の瑞々しい感性で新しい山田林業を築いてほしいという思いから、有望な人材を集めようと考えました」と、山田社長は就職サイトによる新卒採用に踏み切った理由を語る。当初は、本当に応募がくるのか疑問だったが、蓋を開けてみると、全国の有名大学の学生からの応募が絶えなかった。

現場で初の女性社員を採用

 現場採用で初の女性社員となった山口穂奈美氏は「大学では環境保全について勉強していました。大学の授業の一環で間伐を体験することがあり、とても楽しくてこれを仕事にしたいと思うようになりました。」と志望動機を語る。そんな山口氏の強い意志による現場採用であった。昨今、現場では高性能な機械で作業することが多く、昔の林業と異なり力仕事ではなくなってきている。技術さえあれば、性別に関係なく仕事ができる。「女性の就業率がなかなか伸びない林業に、志をもって入社してくれました。自分の持ち味を存分に活かして活躍してほしい」と山田社長は期待を寄せる。


女性では初めての現場採用となった山口穂奈美氏

もはや林業は3K<きつい、汚い、危険>ではない

 山田社長は今回の一連の新卒採用を通して、若い人たちにとってもはや林業は3Kの業種ではなく、「自然との共生を実現する持続可能な社会づくりに貢献できる産業」として認識され始めているという大きな気づきを得た。

「林業なんか若い人は見向きもしない業界だと勝手に思い込んでいましたが、林業は環境保全やSDGsに貢献できる仕事であり、意識が高い学生ほど偏見がありません。むしろ偏見にとらわれていたのは昔から林業に携わっている我々の方でした。たくさんの学生が面接を通し、思いをぶつけてきてくれたことで、そのことに気づけました。うれしかったし、勉強になりました」

「かっこいい林業」を目指す

 若い世代を中心に林業の捉え方が変わってきているが、現実は依然と厳しい状況が続く。就労者の高齢化が進み、木の値段も安価のまま推移、現実的には国からの補助金なしでの経営は厳しい。山田社長は林業活性化のカギは、新たな付加価値の創造にあるという。

「販売する『木』に付加価値をつけて、より利益を確保していかないといけません。例えば、販路を新たに海外に設け、日本の品質の高い木を輸出するなど、新たなアクションを起こす必要があります。そして、若い人が憧れるような『かっこいい林業』をつくらないといけない。地域社会に感謝され、地球環境に貢献でき、経済的にも安定した、誇りをもって働ける『かっこいい林業』。それを目指します」

社会のニーズに対応して企業のスタイルを変化させる

 若い世代を代表する山田社長の長男、山田幸之介氏に林業の未来について聞いてみた。

「林業には多彩な可能性があると思います。木を伐ることで、社会や地球とのつながりを実感できます。当社はこれまでに、柔軟に社会のニーズに対応する形で企業のスタイルを変化させてきました。これからは、私たち若い世代が時代の変化を敏感に感じ取って、新しい林業のスタイルを築いていこうと考えています」日本の林業はこれからも新たな力を吸収して、発展し成長を続けていく。


ログハウスのカフェ「モンタナ」にて。
山田輝幸社長(左)と長男の山田幸之介氏(右)