山田林業が伐採工事を始めた当時は、廃棄された伐採木や木くずを野焼きすることが一般的であったが、大気汚染などの環境問題により野焼きが禁止されるようになる。そこで、同社は産業廃棄物中間処理許可を取得。コマツBR200Tを導入しリサイクルプラントをつくり、自社の伐採木はもちろん近隣の造園業者の剪定枝なども受け入れ、バイオマスや肥料の原料となるチップを製品化。環境負荷を低減させるバイオマス発電などで再利用されている。
また、地域活性に貢献するためにカフェ「モンタナ」を運営するなど、地域振興事業にも熱心だ。林業を中心としながら、自然環境保全と町づくりへと事業を拡大。持続可能な社会の実現を目指す企業としての姿が見えてくる。
現場採用で初の女性社員となった山口穂奈美氏は「大学では環境保全について勉強していました。大学の授業の一環で間伐を体験することがあり、とても楽しくてこれを仕事にしたいと思うようになりました。」と志望動機を語る。そんな山口氏の強い意志による現場採用であった。昨今、現場では高性能な機械で作業することが多く、昔の林業と異なり力仕事ではなくなってきている。技術さえあれば、性別に関係なく仕事ができる。「女性の就業率がなかなか伸びない林業に、志をもって入社してくれました。自分の持ち味を存分に活かして活躍してほしい」と山田社長は期待を寄せる。
女性では初めての現場採用となった山口穂奈美氏
山田社長は今回の一連の新卒採用を通して、若い人たちにとってもはや林業は3Kの業種ではなく、「自然との共生を実現する持続可能な社会づくりに貢献できる産業」として認識され始めているという大きな気づきを得た。
「林業なんか若い人は見向きもしない業界だと勝手に思い込んでいましたが、林業は環境保全やSDGsに貢献できる仕事であり、意識が高い学生ほど偏見がありません。むしろ偏見にとらわれていたのは昔から林業に携わっている我々の方でした。たくさんの学生が面接を通し、思いをぶつけてきてくれたことで、そのことに気づけました。うれしかったし、勉強になりました」
若い世代を中心に林業の捉え方が変わってきているが、現実は依然と厳しい状況が続く。就労者の高齢化が進み、木の値段も安価のまま推移、現実的には国からの補助金なしでの経営は厳しい。山田社長は林業活性化のカギは、新たな付加価値の創造にあるという。
「販売する『木』に付加価値をつけて、より利益を確保していかないといけません。例えば、販路を新たに海外に設け、日本の品質の高い木を輸出するなど、新たなアクションを起こす必要があります。そして、若い人が憧れるような『かっこいい林業』をつくらないといけない。地域社会に感謝され、地球環境に貢献でき、経済的にも安定した、誇りをもって働ける『かっこいい林業』。それを目指します」
若い世代を代表する山田社長の長男、山田幸之介氏に林業の未来について聞いてみた。
「林業には多彩な可能性があると思います。木を伐ることで、社会や地球とのつながりを実感できます。当社はこれまでに、柔軟に社会のニーズに対応する形で企業のスタイルを変化させてきました。これからは、私たち若い世代が時代の変化を敏感に感じ取って、新しい林業のスタイルを築いていこうと考えています」日本の林業はこれからも新たな力を吸収して、発展し成長を続けていく。
ログハウスのカフェ「モンタナ」にて。
山田輝幸社長(左)と長男の山田幸之介氏(右)