相続時精算課税贈与の概要と手続き

掲載日:2025年11月21日

【セミナでのご質問】

私は中小企業の経営者です。
先日のセミナで、中小企業の事業承継において「相続時精算課税贈与」が改正され、活用しやすくなったと説明がありました。
どのように変わったのか、概要を教えてください。

【キド先生からの回答】

相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与する際に選択できる贈与税の制度です。
令和5年度の税制改正で、事業承継にも使いやすい仕組みに変わりました。ポイントは次のとおりです。

  1. 110万円の「基礎控除」が新設
  2. 毎年110万円までの贈与には贈与税がかかりません。
    また、この基礎控除分は、将来の相続時に相続財産へ加算されません。

  3. 2,500万円の「特別控除」は従来通り
  4. 贈与総額が2,500万円までは、贈与時の税負担がありません。
    (ただし、この2,500万円分は将来の相続税計算の際には相続財産へ加算されます。)
    特別控除は複数年にわたって利用できます。

  5. 特別控除を超えた部分は20%の贈与税
  6. 2,500万円を超える贈与額については、贈与時に20%の税率で贈与税を納めます。
    ただし、この税額も相続時に最終的に精算されます。
【キド先生のコメント】

相続時精算課税を使うには、最初の贈与を受けた翌年の贈与税申告の際に、税務署へ届出が必要です。

■必要な手続き

・「相続時精算課税選択届出書」を、贈与税の申告書に添付して税務署へ提出
・届出書の様式はインターネットからダウンロード可能
・届出書には「戸籍謄本」等の添付が必要

制度の選択は将来の相続税にも影響するため、事前に専門家へ相談することをおすすめします。