ICTをいかに普段使いするか。それが事業拡大の原動力

「特別な技術」ではなく「普段使いの道具」としてICTを取り入れ、急成長中の株式会社ネクサス。

内製化を推進し事業規模を拡大

 株式会社ネクサスは、奈良県奈良市に本社事務所を構える総合土木建設企業である。主に宅地造成、道路・河川・上下水道といった社会インフラの整備を中心に手がけ、確かな技術力と迅速な対応力で安全・安心な街づくりに貢献している。「内製化によってスピーディーかつ効率的な業務が推進でき、利益も確保できるので、あらゆることを内製化していきたいと考えています。また、ワンストップで多彩なサービスを提供できるため、お客さまにもメリットを感じていただいています」と、代表取締役の岡田憲博氏は語る。
(写真:株式会社ネクサス 代表取締役 岡田憲博 氏)

ICTを多彩なシーンで普段使い

ICTの導入においても同社では内製化へのこだわりを貫いている。マルチGNSSに対応した高精度測量を可能とするSmart Construction Rover (SCローバー)をはじめ、ドローン、レーザースキャナーといった機器を自社で保有し、図面の3D化も含めて社内で対応している。ソフトウェアからハードウェアの運用に至るまで、自社内でICT環境を整備し、運用できる体制を構築している。
また、ICTの導入によって手元作業員が不要となり、大幅な人員削減を実現した。「今行っている現場では、丁張の設置に必要な人員は延べ100人を超える見込みでした。それだけの人員を削減できたというわけです。また、人的ミスがなくなるので手戻りもありません。工期の短縮やコストの削減といった効果も大きいです」と、本社工事部課長の片川薫氏は語る。
(写真:株式会社ネクサス 本社工事部 課長 片川薫 氏)

3D図面を使わないICT施工を推進

 同社では、2025年2月にPC200i-12を導入。ICTをより多くの建機に展開し、社内へのスムーズな浸透を図ることを狙いとしたものである。また、図面の3D化を必要としないクイックスマートコンストラクション(クイックスマコン)も積極的に活用している。ICT建機が持つ無限平面の作成機能と、平面図のモニター表示機能を活用し、簡易に3D施工を実現できる手法である。「図面の3D化はもちろん行っていますが、それにこだわりすぎる必要はなく、掘削だけであればクイックスマコンで十分に対応が可能です」と、岡田社長は簡易なICT施工の有効性を語る。

PC200i-12がオペレーターの技術を補う

 PC200i-12の導入背景には、オペレーターの高齢化という課題があった。従来、オペレーターは長年の経験を通じて技術を磨いてきたが、そのスキルを次世代に継承するのは容易ではない。しかし、マシンコントロール機能を搭載したPC200i-12であれば、特別な技術を必要とせず、技術的なギャップを補うことができる。
 また、PC200i-12にはコマツ独自の電子制御油圧システムが搭載されており、その性能も高く評価している。「以前はブームの上げ下げの速度や操作に対する反応速度の調整ができませんでしたが、PC200i-12では標準設定で非常に反応が早く、スムーズな操作が実現しました。操作スピードや反応速度の調整は、オペレーターの特性や現場状況に応じて最適な設定が可能です」と、片川課長は語る。

ICTは若手に寄り添う現場監督のような存在

同社ではICTの活用に当たり、Smart Construction®の各種アプリを積極的に導入している。例えば、ダンプや建設機械などの稼働状況をリアルタイムで見える化する「Smart ConstructionFleet」や、スマートフォンで手軽に現場の点群データを作成できる「Smart Construction Quick3D」などを日常的に使用している。
「Smart Construction Fleetを使えば、ダンプの現在地が一目でわかり、無駄な待機時間がなくなります。現場の作業員も指示待ちではなく、自主的に動ける環境が整います。また、当社では山林の保有・管理も行っており、Smart Construction Quick3Dを活用することで、スマートフォンを使って簡易に測量ができ、非常に重宝しています」と、岡田社長は語る。
また、ICTは若手作業員の成長にも大きく寄与しているという。「ICTは若手に寄り添いながら、品質の高い業務を支え、同時に教育の機会も提供してくれます。まるで、ベテランの現場監督が一人の作業員に付き添いながら業務を教えているようなものです」と岡田社長は、人材育成の観点からもICTを高く評価している。

社員の自主性を重んじる社風

 建設業界が人材不足に直面するなか、同社では比較的スムーズに若手人材の採用が進んでいる。その背景には、社員の自主性を尊重する社風がある。「従業員に対して細かい指示は出さず、個々の判断に委ねる場面を多く設けています。ルールも上から押しつけるのではなく、社員自身が率先してつくっています。自分たちで決めたルールだからこそ、責任を持って運用しています」と岡田社長は社員一人ひとりが主体的に動くことの大切さを語る。
 また、福利厚生も充実しており、元銀行員でファイナンシャルプランナーの資格を持つ本社工事部主任の田端雄大氏は、「以前は銀行員として当社を担当していましたが、社長の人柄と社風に惹かれて転職を決意しました。今では充実感を持って業務に取り組めており、毎日が楽しいです」と語る。こうした社風の良さが、社員の定着にもつながっている。 (写真:株式会社ネクサス 本社工事部 主任 田端雄大 氏)
 土木事業からスタートした同社は、現在では林業分野にまで事業領域を拡大。今後は農業分野への進出も視野に入れている。自社完結型のビジネスモデルを志向するネクサスの挑戦は、今後も大きな注目を集めることだろう。