ICT施工を駆使し北海道のインフラを支える

北海道特有の課題に立ち向かう北伸建設工業株式会社。地域社会と共に成長を続ける企業の挑戦に迫る。

 

100台以上の建機を保有しインフラを整備

北海道砂川市に本社を構え、札幌市と旭川市の間に広がる空知エリアを中心に、道路、河川、農業基盤整備といったインフラ工事を行っている北伸建設工業株式会社。創業は1974年で、歴史は約50年におよぶ。土木工事に始まり、ゴルフ場の造成や東北地方の復興支援など、時代のニーズに合わせて事業内容を多様化させて発展を遂げてきた。導入している建機の台数は北海道でもトップクラスの規模を誇り、100台以上の建機を保有。そのうちの約7割がコマツ製だ。
「建機1台を手に創業して約1年たった頃、事業を拡大したいと考え、複数台の建機の購入を検討しました。コマツに相談したところ、担当者が私の家まで来てくれたのです。当時私は20代で、風呂なしアパートに住んでおり、相手にされないだろうと思っていましたが、親身に話を聞いてくれました。そして、私を信用してブルドーザーD60を2台売ってくれたのです。それからのお付き合いです。50年を偲うと、空知地方トップ企業の元請様にお世話になり今があります」と、代表取締役会長の増田秀雄氏は振り返る。
(写真:北伸建設工業株式会社 代表取締役 会長 増田秀雄 氏)

ICT施工で約3倍のスピードアップ

ICT建機導入のきっかけは、受注する公共工事にICT活用工事を指定されるケースが増えたからだ。まず、後付けのスマートコンストラクション3Dマシンガイダンスを既存の油圧ショベルに取り付けることでICT化をスタート。その後、ICT施工の有効性を実感し、ICT建機の導入を進めた。「なんといっても、ICTは楽ですね。3D図面どおりの業務がスムーズにできます。しかも、3D図面やローカライゼーションデータがない場合でも、マシンガイダンス機能が使えます。業務の効率化にとても貢献しています」と、代表取締役社長の増田拓也氏は語る。
ICT施工を行うことで丁張りの設置が不要となり、大幅な作業効率とコスト削減を実現。建機周辺に手元作業員を配置する必要がなくなり、安全でスピーディーな施工が可能となる。常務取締役の木口仁氏は「ICT施工だと、従来の方法に比べて3倍くらいスピードアップします。作業員の人数も減るので、安全性の確保に加えて、コストダウンも実現します。ICT建機によって現場が大きく変わりました」と、ICT施工のメリットを説明する。
北伸建設工業株式会社
代表取締役 社長
増田拓也 氏
北伸建設工業株式会社
常務取締役
木口仁 氏

積雪のある北海道ではICTは必須

同社では、約20万m³の処理能力を持つゴミ処理場の建設工事において、ICT建機を活用し、発注者からのスケジュール要請に応えた。北海道では積雪の影響で冬季は工事が中断される。そのため発注者の意向として積雪前に全工程を完了させることが求められ、2024年4月に着工し同年内に完成させるという条件が提示された。従来の施工方法では年内には完成せず、翌年の夏頃まで工期が延びることになる。そこで同社はICT施工を提案した。
「ICTであれば年内に完成する見込みが立ちました。その現場は補正情報が届かないエリアだったため、固定局を設置してICT施工を可能な環境としました。完全ICT施工で無事にスケジュールどおり年内に完成しました。3D図面の作成や通信環境の整備など、ICT施工には事前の準備が必要ですが、結果的に作業スピードは断然速いですね。積雪によって冬季に工事が中断してしまう北海道では、ICTはなくてはならない技術です」と、木口常務は解説する。
(写真:約20万m³の処理能力を持つ株式会社栄進 最終処分場 建設工事現場)

オペレーターの技術向上にも尽力

同社では、オペレーターの技術向上にも力を入れている。「ICTは優れた技術です。経験の少ないオペレーターでも効率的に作業できます。ただし、バケットをどれくらい動かせば図面どおりになるのか、どの程度の力をかければきれいに仕上がるのかなど、従来の施工方法を十分に理解してこそ、ICT建機を最大限に活用できると考えています。当社では従来型の建機操作も教育の一環としてオペレーターに義務付けています」と、増田秀雄会長は語る。
また、機械部部長の中川忠氏は「ICT建機を使っているときでも、自分の目で仕上がりを確認しながら作業を進めています。すべてをICT建機任せにするのではなく、オペレーター自身が責任を持って作業することが大切です。先進技術とオペレーターの技術、この二つが揃って初めて品質の高い施工が可能になると考えています」と、オペレーターの操作技術の重要性を説明する。
北伸建設工業株式会社
機械部 部長
中川忠 氏
法面整形をするPC200i

ICTをきっかけに社内のDX化を推進

同社ではICT建機の導入を契機に、社内のDX化も積極的に推進している。電子日報を導入し、現場と事務所間のリアルタイムでの情報共有を実現。「ICT建機を導入したことで、IT技術を活用するメリットを実感しました。これが起点となり、社内でDX化を推進する機運が高まりました。経費削減や働き方改革を実現するため、全社一丸となってチャレンジを続けています」と、増田拓也社長は話す。
人材不足が社会的な課題となっているなかで、同社では毎年4~5名の若手人材を採用している。その原動力となっているのは、独自の求人活動だ。同社では求人媒体の活用や自社ウェブサイトの充実化を図っている。「入社動機に、ICT建機を導入していることを挙げる方は非常に多いです。ICT施工は生産性の向上だけでなく、若手人材の採用面でも大きな貢献を果たしています」と増田拓也社長はICT建機導入の付加的なメリットを指摘する。

地域社会のインフラを整備し、雇用を生み、地域社会と共に成長を続ける北伸建設工業株式会社。先進技術を取り入れながら人の成長を見守り、確かな技術で社会の発展を支えている。