フォークリフトの電動化で環境対策と業務効率の両立を実現

世界有数の住宅メーカー積水ハウス株式会社。ゼロエミッションを達成し、持続可能な社会を目指す

持続可能な社会の実現へ先導

世界一の累計建築戸数266万戸超(2024年1月31日現在)を誇る世界有数の住宅メーカー、積水ハウス株式会社。戸建て住宅や建売住宅、分譲・賃貸マンションまで幅広く手掛けており、従業員は約3万人、売上高は3兆円を超える。環境対策においても業界を牽引するリーディングカンパニーだ。
同社は、1999年に「環境未来計画」を発表し、本格的な環境対策を開始した。現在の目標では、2030年までにCO₂排出量を50%削減(2013年度比)すると設定していたが、2021年に46.6%の削減を達成したことから、目標を75%削減へと上方修正した。この目標達成を確実なものとするために業務用車両の電動化など、さまざまな対策を進めている。

フォークリフトの電動化を進める基幹工場


茨城県古河市に位置する関東工場は1970年8月に同社2番目の工場として稼働を開始した。敷地面積は約31万㎡、鉄骨系および木質系の工業化住宅の部材を製造している。関東1都6県および山梨県に部材を供給する主要拠点であり、全工場の約45%の生産量を占めている基幹工場だ。
関東工場では、環境対策の一環としてフォークリフトの電動化を推し進めている。「工場内には約130台のフォークリフトが稼働しています。そのうち、当工場が保有するフォークリフトは7~8割で、残りは協力会社の保有機です。まだエンジン駆動式が10台ほど残っていますが、次回の契約更新時にすべての保有機を電動式にする予定です。協力会社にもご理解いただき、随時、電動式へ移行してもらう予定です」と、関東工場設備情報部長の都築勇氏は語る。
(写真:積水ハウス株式会社 関東工場 設備情報部長 都築勇 氏)
積水ハウスの基幹工場となる関東工場

エンジン駆動式で多かった課題

積水ハウス関東工場内の資源循環センターは、積水ハウスの全国の施工現場から出るすべての廃棄物を回収し、分別・リサイクルを行っている。当センターに集められた廃棄物の移動や廃棄物用コンテナへの投入などに、フォークリフトが活躍している。従来はエンジン駆動式が主流だったため、環境への影響だけでなくさまざまな課題があったという。
「排ガスだけでなく排ガスによって巻き上がる粉塵などで工場内の作業環境はよくありませんでした。さらに、燃料にLPガスを使用する場合は、重いガスボンベの管理や設置などの煩雑な作業が発生し、オペレーターの負担になっていました」と、設備情報部スペシャリストの小林進氏は語る。
(写真:積水ハウス株式会社 関東工場 設備情報部 スペシャリスト 小林進 氏)

安全性と操作性が向上

同工場では2019年に鉛バッテリー搭載の電動式フォークリフトFE25-1を導入し、フォークリフトの電動化が始まった。排ガスはなく、当然粉塵の巻き上げもない。静音性にも優れており、クリーンで快適な作業環境を実現した。また2021年からはFE25-1のフルモデルチェンジ機FE25-2の導入を進めた。ステアリング量に応じて旋回半径を検知し、車速を自動制御する機能が搭載されているため安全な運転が可能となった。
さらに、「アクセルワンペダルモード」によりアクセルペダルだけで加減速や停止ができるため、ブレーキペダルへの踏み替え回数が減少することから、オペレーターの疲労軽減にもつながっている。「操作性が向上したことで、より快適かつ安全に作業できるようになり、業務の効率化につながっています」と、小林氏はFE25-2を高く評価する。
(写真:フォーク部分を回転させ廃棄物をコンテナへ投入する)

大容量バッテリー搭載のFE25G-2

積水ハウス関東工場内の第1工場では、資材の荷下ろしや積み込みといった荷役業務にフォークリフトが活用され、資源循環センターと同様に電動化が進められている。同工場では、鉛バッテリーのFE25-2に加え、大容量リチウムイオンバッテリーを搭載したFE25G-2が導入されている。理由は24時間稼働している製造ラインもあり、フォークリフトの長時間稼働が求められるからだ。
FE25G-2は一般的な鉛バッテリー搭載のフォークリフトと比較して、バッテリー容量が35%多く、バッテリー寿命も3倍以上。充電時間が短く、こまめな継ぎ足し充電も可能だ。「10分程度の短い休憩時間で急速補充電ができることは、24時間稼働する現場では必要不可欠です。しかも、充電中は充電プラグがロックされるため、作業員が急いでいたりして誤って充電プラグを引き抜こうとしても抜けることはありません。安全性にも十分配慮されており、本当に頼もしいです」と、製造部鉄工グループスペシャリストの齊藤弘幸氏は語る。
急速充電器での1口充電時、約1.8時間で満充電
積水ハウス株式会社 
関東工場 製造部 鉄工グループ スペシャリスト 齊藤弘幸 氏

危険動作シミュレーションを実施

同工場ではコマツとの協業で、危険動作シミュレーションを行っている。フォークリフトにカメラとGセンサーを設置し、工場内での速度の推移や車体の傾き、衝撃値などを計測。そのデータを分析することで、工場内のどこに危険が潜んでいるのかを明らかにし、床面の補修や照明のLED化など作業環境を改善した。「機械だけでなく、運用までを含むコマツの総合的なサポートにより、業務の効率化と安全性の向上が実現しました」と、コマツと良好な関係であることを都築部長は語る。

更なる生産性の向上を目指す

基幹工場として更なる生産能力の向上を求められている積水ハウス関東工場だが、一方で働き方改革や業務の効率化の観点から稼働時間の短縮化が課題となっている。「生産性を高めるためには、新たな機械や設備の導入が必要になります。最先端の技術を活用することで環境対策同様に生産性の強化を図っていきます」と、都築部長は抱負を語った。