有線式電動油圧ショベルがもたらす現場の革新と環境改善

産業廃棄物の中間処理を事業とする東海環境株式会社。業務効率の向上と作業環境の改善を実現。

積極的なM&Aで事業規模を拡大

2008年に創業し、大阪を拠点に解体工事から、工事で発生する産業廃棄物の収集運搬、中間処理までをワンストップで行っている東海環境株式会社。大阪府八尾市にある八尾工場を起点に事業展開し、2016年にはリサイクル工場「サンドクリーン」を設立した。従来、埋立処分しかできなかった土砂を含む混合廃棄物を、洗浄・精選処理し再生砂をつくり出している。これにより、同社は中間処理工場の役割に加え、製造工場としての機能も有している。
また同社は、企業の成長戦略としてM&Aを積極的に展開している。2018年から2020年にかけて宮崎県、福岡県、愛知県、大阪府の産業廃棄物処理企業を次々と買収。「企業の拡大・成長を図る上で、M&Aは重要な戦略です。新しく最終処分場をつくるには、土地の選定、許可の取得、そして地域社会との関係構築など多くのプロセスが必要で、約10年間の時間を要します。しかし、それではスパンが長すぎます。スピード感をもって経営を進めていくためにM&Aは欠かせません」と代表取締役の中島聖智氏は語る。
(写真:東海環境株式会社 代表取締役
中島聖智 氏)

4台の有線式電動油圧ショベルを導入

八尾工場の主な業務は土砂系廃棄物の中間処理。同工場では有線式電動油圧ショベルPC138USE-11を4台導入し、中間処理業務を支えている。従来、同工場ではエンジン駆動式の油圧ショベルを使用していたが、粉塵によるオーバーヒートや部品の故障が頻発し、生産性に大きな影響を与えていた。「土砂を扱うため、粉塵が非常に多いです。エンジン駆動式では粉塵による目詰まりが頻繁に発生していました。現場が止まってしまうこともあり、エンジン駆動式から電動式への移行を常に検討していました」と、中島社長は電動油圧ショベルの導入背景を語る。

業務の流れを考慮しPC138USE-11を配置

PC138USE-11を2024年5月から8月にかけて導入した。4台はそれぞれ、土砂系廃棄物の選別機への投入、土砂搬出のためのトラックへの積み込み、土砂系以外の廃棄物の破砕機への投入、そして破砕された廃棄物をカッターで更に細かく破砕する作業に使われている。有線式のため建機の行動範囲は当然制限されるが、効率的に業務を行えるよう工場のレイアウトや業務の流れを十分に考慮し、建機の配置や高圧受電設備キュービクルの設置位置を決めた。
同社に導入されたPC138USE-11は「配管内蔵バケットシリンダー」が採用されており、産廃仕様となっている。配管内蔵バケットシリンダーは、シリンダーの上下を逆転させロッドをアームの上側に配置した構造が特徴で、粉塵によるロッドの損傷を軽減し、油漏れなどの不具合の発生を低減する。
配管内蔵バケットシリンダーが採用された産廃仕様のPC138USE-11

ランニングコストと手間が大幅削減

PC138USE-11は現場にさまざまなメリットをもたらしている。「エンジン駆動式は、粉塵によって目詰まりしたフィルターの掃除などのメンテナンスが結構な頻度で必要でした。しかし、電動式にしたことでその維持管理のためのランニングコストと手間が大幅に削減しました」と、オペレーターの永田利雄氏は語る。
また、オペレーターの前田耕作氏は「電動式だとコックピットに熱がこもらないのがいいですね。エンジン駆動式だと熱がこもり、しかも粉塵によるエアコン系のトラブルも多かったので、酷暑での作業は大変でした。また、音が静かなのもいいです。イヤホンでトランシーバーから指示を聞くのですが、これまではエンジン音が大きく聞き取りづらいことがありました。電動式は指示もクリアに聞き取ることができて、コミュニケーションもスムーズになり、より効率的で安全に作業を進められます」と、電動式のメリットを説明する。
東海環境株式会社 オペレーター 永田利雄 氏
東海環境株式会社 オペレーター 前田耕作 氏

オールコマツ体制で手厚いサポート

グループ会社を含め同社が所有している約60台の建機はすべてコマツ製だ。コマツ独自の稼働管理システムKomtraxを活用し、コマツの担当者が現場に足を運び、現場の声を吸い上げるきめ細かい対応によって総合的なサポートが実践されている。「既存の建機をいかに活用し、新しい建機をどのタイミングで導入するかは、経営上の大きな課題です。コマツから各建機の稼働状況や最新の業界動向など、さまざまな情報を提供いただき、経営判断に役立てています。パートナーとしてとても信頼しています」と、中島社長は語る。

電動化を進めることでイメージを払拭

同社では更なる使い勝手のよさを求め、2024年10月に大容量リチウムイオンバッテリー搭載の無線電動ショベルPC138E-11をレンタルで導入した。有線が無線に、そして将来的には有人が無人になることで、作業環境が改善されると同時に、業界のイメージ刷新につながることを期待している。
「産業廃棄物処理業は『3K(きつい・汚い・危険)』といわれる業界です。無人化が進み、オフィスに設置されたコックピットから、遠隔地にある工場の油圧ショベルを操作できるようになれば、業界のイメージは大きく変わるはずです。現状の遠隔操作では、手元の操作と建機の動作にタイムラグが発生します。これが解消され条件が整えば、すぐにでも導入したいです」と、中島社長は今後のビジョンを語った。
(写真:大容量リチウムイオンバッテリー搭載 PC138E-11)