世界トップクラスの水銀リサイクルシステムで環境保全に寄与

水銀リサイクルの拠点を運営する野村興産株式会社。自然と地域社会との共生を図る。

水銀のリサイクル処理に尽力

野村興産株式会社の歴史は水銀のリサイクル処理の歴史といえる。前身の野村鉱業株式会社は東洋一の水銀生産量を誇ったイトムカ鉱山にイトムカ鉱業所を開設し、産業の近代化に貢献した。そして、1973年に水銀鉱山に携わった人々の技術と施設を買い取る形で、野村興産株式会社(当時:イトムカ興産株式会社)が設立された。水銀廃棄物から水銀を回収する技術を適用し、イトムカ鉱業所に水銀含有廃棄物の無害化処理ならびにリサイクル施設を設置した。その後、使用済み乾電池の環境への影響が社会問題化したことを受け、1985年に日本で唯一の水銀含有廃棄物再資源化実証プラントを竣工。創業以来、一貫した再資源化技術の開発と事業化を図り、環境負荷の低減を推進してきた。

廃棄物処理施設として社会に貢献

イトムカ鉱業所は北海道東大雪山系に近い標高600mの豊かな自然と動植物に囲まれた北海道北見市留辺蘂町(るべしべちょう)にある。日本をはじめ世界から運搬された乾電池、蛍光灯、水銀血圧計・体温計、水銀含有汚泥などの廃棄物は、それぞれ最適な方法によって処理を行う。水銀は100%リサイクルし、そのほかの構成成分も可能な限りリサイクルしている。

「2022年にカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みとして太陽光発電を導入しました。工場全体の電気使用量の約10%を再生可能エネルギーで賄うことでCO₂の削減に貢献しています」と、イトムカ鉱業所取締役イトムカ鉱業所長の築地原康志氏は語る。

(写真:野村興産株式会社 イトムカ鉱業所 取締役 イトムカ鉱業所長 築地原康志 氏)

電動式を導入し、環境負荷低減を推進

FE30導入に当たって懸念していたのはパワーだ。同鉱業所は山間部に設置されていることもあり、敷地内に坂がある。その坂を業務に支障をきたすことなくスムーズに登れるのか、といった課題が浮かび上がった。そこで、FE30を導入している企業の視察やさまざまな検証を行い、導入へと踏み切った。「当初不安に感じていたことは杞憂でしたね。電動式はエンジン式同様にパワフルです。また、倉庫はドアを開口し風通しをよくしていますが、それでも従来は排ガスが倉庫内にこもっていました。電動式だと排ガスがないので、作業環境はとてもクリーンになりました。しかも、粉塵を巻き上げることもなく振動も少ないためとても快適です」と、森谷課長は語る。また、イトムカ鉱業所製錬課係長の小垣克己氏は「何より音が静かで驚きました。騒音がない分、コミュニケーションが円滑になり、業務効率の向上につながっています。一方で、静かすぎるので出庫する際にはクラクションを鳴らして注意喚起を図るなど、安全確認を徹底しています」と語る。

大容量バッテリーによる効率化

さらに同社では、リチウムイオンバッテリー搭載のFE30Gの発売を受けて、FE30Gの導入を決めた。「鉛バッテリー搭載のFE30に不満があったわけではありません。大変満足していました。そこにコマツから『充電に関して使い勝手が更によくなった』とFE30Gの提案があり、これまで以上の効率化を目指し、導入を決めました」と、FE30G導入の経緯を森谷課長は語る。

リチウムイオンバッテリーは鉛バッテリーと比較すると、3t車のバッテリー容量は約22%アップし、充電時間は大幅に短縮。さらに、継ぎ足し充電による連続稼働が可能となり、バッテリー寿命も3倍以上に増えた。「夜間に1日分の充電を行っています。鉛バッテリーだと負荷がかかる作業をすると、充電が持たないことがありました。しかし、リチウムイオンバッテリーは大容量のためその心配はなくなりました。また、当社には24時間稼働している工場もあり、リチウムイオンバッテリーなら急速充電で十分に補充できます。それに加えて継ぎ足し充電を重ねてもバッテリーの消耗につながらないのがいいですね」と、イトムカ鉱業所製造課の足立享哉氏は語る。同社は2023年11月にFE30Gの導入をはじめ、冬場でもしっかり稼働できたことから2024年4月に5台を追加導入し、電動化を一層進めている。

機械の管理には「Komtrax」を活用している。Komtraxはインターネットを介して各機械の稼働状況を確認できるシステムで、工場内や離れた拠点の機械の一括管理が可能だ。導入効果を数値化することができ、機械導入の際の目安になるため大いに役立っているという。「現在、フォークリフトだけでなく、油圧ショベルのPC200やPC138US、ホイールローダーのWA200など、さまざまなコマツの建機が稼働し、それぞれの稼働状況を管理しています。その状況を踏まえ、今後はフォークリフトだけでなく、可能であればそのほかの建機に関しても電動化を検討していきたいと考えています」と、森谷課長は語る。

野村興産株式会社

イトムカ鉱業所 製造課

足立享哉 氏

今後も地域社会との共生を推進

同鉱業所は水銀を取り扱う中間処理から最終処分までの完結型の施設だ。万全の安全対策を整備し業務を推進しているが、地域社会の理解と協力があってこそ事業が可能となる。

「当社ではISO 14001を取得し、徹底した管理体制のもと業務を行っています。今後も真摯に技術研鑽を積み重ね、安心と信頼を更に築いていきたいと考えています。これからは水銀の取り扱いが減っていくことも予想されるため、これまでに培ってきた技術を活かして、新しい可能性を検討していきたいです」と築地原所長は語る。

 

妥協のない高品質な廃棄物処理と地域社会との共生を通じて、野村興産株式会社は地球環境の保全を実現しながら成長を続けていく。