FE30導入に当たって懸念していたのはパワーだ。同鉱業所は山間部に設置されていることもあり、敷地内に坂がある。その坂を業務に支障をきたすことなくスムーズに登れるのか、といった課題が浮かび上がった。そこで、FE30を導入している企業の視察やさまざまな検証を行い、導入へと踏み切った。「当初不安に感じていたことは杞憂でしたね。電動式はエンジン式同様にパワフルです。また、倉庫はドアを開口し風通しをよくしていますが、それでも従来は排ガスが倉庫内にこもっていました。電動式だと排ガスがないので、作業環境はとてもクリーンになりました。しかも、粉塵を巻き上げることもなく振動も少ないためとても快適です」と、森谷課長は語る。また、イトムカ鉱業所製錬課係長の小垣克己氏は「何より音が静かで驚きました。騒音がない分、コミュニケーションが円滑になり、業務効率の向上につながっています。一方で、静かすぎるので出庫する際にはクラクションを鳴らして注意喚起を図るなど、安全確認を徹底しています」と語る。
さらに同社では、リチウムイオンバッテリー搭載のFE30Gの発売を受けて、FE30Gの導入を決めた。「鉛バッテリー搭載のFE30に不満があったわけではありません。大変満足していました。そこにコマツから『充電に関して使い勝手が更によくなった』とFE30Gの提案があり、これまで以上の効率化を目指し、導入を決めました」と、FE30G導入の経緯を森谷課長は語る。
リチウムイオンバッテリーは鉛バッテリーと比較すると、3t車のバッテリー容量は約22%アップし、充電時間は大幅に短縮。さらに、継ぎ足し充電による連続稼働が可能となり、バッテリー寿命も3倍以上に増えた。「夜間に1日分の充電を行っています。鉛バッテリーだと負荷がかかる作業をすると、充電が持たないことがありました。しかし、リチウムイオンバッテリーは大容量のためその心配はなくなりました。また、当社には24時間稼働している工場もあり、リチウムイオンバッテリーなら急速充電で十分に補充できます。それに加えて継ぎ足し充電を重ねてもバッテリーの消耗につながらないのがいいですね」と、イトムカ鉱業所製造課の足立享哉氏は語る。同社は2023年11月にFE30Gの導入をはじめ、冬場でもしっかり稼働できたことから2024年4月に5台を追加導入し、電動化を一層進めている。
機械の管理には「Komtrax」を活用している。Komtraxはインターネットを介して各機械の稼働状況を確認できるシステムで、工場内や離れた拠点の機械の一括管理が可能だ。導入効果を数値化することができ、機械導入の際の目安になるため大いに役立っているという。「現在、フォークリフトだけでなく、油圧ショベルのPC200やPC138US、ホイールローダーのWA200など、さまざまなコマツの建機が稼働し、それぞれの稼働状況を管理しています。その状況を踏まえ、今後はフォークリフトだけでなく、可能であればそのほかの建機に関しても電動化を検討していきたいと考えています」と、森谷課長は語る。野村興産株式会社
イトムカ鉱業所 製造課
足立享哉 氏