常にチャレンジすることで企業を前進させる

無人化施工のスペシャリストとして業界を牽引する株式会社今井工務店。ICT施工が企業成長の一助に。

新しいものを積極的に取り入れる

中部山岳国立公園と妙高戸隠連山国立公園の2つの国立公園を有する自然豊かな山間の村、長野県北安曇郡小谷村に拠点を構える株式会社今井工務店。創業は1956年、先代社長が建築業から事業を始めた。その後、土木工事の下請けを行うようになり、徐々に取り扱いが増加。現在では売上高の約9割が土木工事だ。「先代社長は『新しいものをどんどん取り入れていこう!』というチャレンジ精神が旺盛で、それがDNAとして脈々と受け継がれています。新しい技術や機械を積極的に導入し、常に新しいことにチャレンジしています」と二代目の代表取締役の今井頌治氏は語る。

(写真:株式会社今井工務店 代表取締役 今井頌治 氏)

無人化施工への挑戦

同社では、全国に先駆けて無人化施工に挑戦し、無人化施工のスペシャリストとして業界を牽引している。「1995年に関川流域および姫川流域に甚大な被害をもたらした7.11水害が起こりました。その翌年に復旧工事を行っていた作業員14名が土石流に巻き込まれて死亡するという、大変痛ましい蒲原沢土石流災害が小谷村で発生しました。その後、工事は再開されることになりますが危険なエリアに作業員を立ち入らせないために、無人化施工が導入されることになりました。その際に、元請けのゼネコンから無人化施工に対応できるオペレーターを提供してほしいと当社に依頼がきたのです」と、今井社長は無人化施工を始めた経緯を話す。

トップクラスの品質を誇る無人化施工

始めは初心者だった無人化施工も、経験を重ねていくうちに技術力の高さを評価されるようになり、全国のさまざまな現場にオペレーターと建機を派遣するようになった。「リモコンの操作は基本的には建機の操作と同じなので、それほど難しくはありません。ただし、手元の操作と建機の動きとではどうしてもタイムラグが発生します。このタイムラグに慣れるのに一苦労しました。また、操作する際に注意することは安全確認です。有人区域と無人区域の区別をバリケードや幟旗などで明確に表示し、十分に安全確認を行って作業しています」と、オペレーターの木島好樹氏は無人化施工を行ううえでの留意点を説明する。

現在では、油圧ショベルやクローラーダンプなど10台の無人化施工対応建機を所有。北海道から沖縄まで全国各地の工事を請け負い、火山災害のあった雲仙普賢岳や桜島、さらには福島第一原子力発電所など、さまざまな現場で無人化施工を行ってきた。その技術と品質は日本のトップクラスだ。「社員はみんな、全国どこにでも行って、災害のあった地域の安全を確保するんだという気概を持って業務にあたっています」と、今井社長は語る。

ICT施工が業務の効率化を実現

公共工事におけるICT活用工事の増加に伴い、ICT施工にも積極的に取り組んできた。現在砂防工事を行っている現場では、ブレードの自動制御が可能なマシンコントロール機能搭載のブルドーザーD61PXiとオペレーターへの情報提供が可能なマシンガイダンス機能搭載(Smart Construction 3D Machine Guidance)の油圧ショベルPC200が盛土および法面整形を実施。業務の効率化に大きく貢献している。

「幅が約200mある現場に丁張を設置しようとすると、2~3日はかかるでしょう。しかし、ICT施工は丁張設置の必要はありません。3Dの図面をICT建機に読み込ませるだけで準備完了です。作業時間は大きく削減されました」と、オペレーターの武田剛氏は話す。さらに「ICT建機であれば、乗ったままタブレットの画面を確認し、操作することで図面どおりに仕上げることができます。効率が向上するだけでなく、体力的にもだいぶ楽になりました。また、作業する建機の周りに手元作業員がいないので、安全性も大きく向上しました」と、ICT施工導入のメリットを解説する。

株式会社今井工務店 オペレーター

武田剛 氏

リモコンの遠隔操作で無人化施工を行うオペレーターの木島好樹 氏

図面の3D化を内製化することでノウハウを蓄積

ICT建機であれば経験の浅いオペレーターでも経験豊富なオペレーター同様の高品質な業務が可能となる。D61PXiを操縦し盛土工事を行っているのは、キャリア3年のオペレーター竹田弘美氏だ。「免許を取得して、まったく別の業界から当社に転職してきました。それまではブルドーザーだけでなく建機の操縦などをしたことがありませんでした。初めて乗った建機がD61PXiで、マシンコントロールが搭載されているため図面どおりの正確な作業が行えます。まったくの初心者でしたがすぐに慣れ、精度の高い業務をこなすことができました」と竹田氏は語る。

ICT施工するうえで図面の3D化は欠かせない。専門知識やスキルが必要なため外部のパートナーに外注する企業も多いが、同社では内製化している。「導入当初は苦労しましたが、今ではスムーズに3D化できるようになりました。内製化することで利益率は向上し、社内にノウハウが蓄積されていきます。これまでに培ったICTに関するさまざまな知見をいろいろなフィールドに活かしていきたいです」と、工務部課長の橋本行生氏は語る。

株式会社今井工務店

オペレーター

竹田弘美 氏

株式会社今井工務店

工務部課長

橋本行生 氏

地域の冬場の交通を支える

同社は、除雪作業を1970年頃から一貫して続けている。「小谷村は日本屈指の豪雪地帯です。地域社会のヒトやモノの流れを止めないためにも、冬場の除雪はこの地域にとって重要な仕事です。当社では朝の3時から人が動き出す7時までの間に除雪を行い、地域の皆さまが不自由を感じることなく生活ができるよう環境を整えています。とてもやりがいを感じていますし、作業自体は楽しんでやっています(笑)」と竹田氏は語る。

チャレンジすることで企業の魅力を創出

「企業が成長していくためには、恒常的に進歩しないといけません。現状維持では衰退していくのみです。いろいろなことにチャレンジして、社員と共に少しでも前に進み、企業としての新しい魅力を生み出していきたいです」と、今井社長は抱負を語る。

株式会社今井工務店の先進的でエネルギーあふれる活動が、企業の更なる進化を実現していく。