優れた技術を使いこなすことで「三方よし」を実現

地域の建設業を牽引している株式会社三東工業社。先進技術で地域社会と自然環境保全に貢献。

地域のリーディングカンパニー

滋賀県南部に位置する栗東市に本社を構える(本店は甲賀市信楽町)株式会社三東工業社は、土木事業と建築事業を展開している。総合建設業としては滋賀県唯一の上場会社で、リーディングカンパニーとして地域を牽引しており、常に時代の最先端の技術を先駆的に取り入れてきた。「新しい技術にはいつも高い関心を持っています。ICT施工に関しても、公共のICT施工が始まる前に、『試しにやってみよう!』と、最初は建築の分野でチャレンジしました」と、代表取締役社長の奥田克実氏は語る。

(写真:株式会社三東工業社 代表取締役社長 奥田克実 氏)

ドローンの出来形管理でICT施工を導入

土木事業において本格的にICT施工に取り組むようになったのは2016年、滋賀県の道路新設事業を受注したのがきっかけで、滋賀県としても初のICT活用工事だった。「ICT施工は生産性を格段に向上させます。生産性を追求する意味でも、新しいものにチャレンジする意味でも、私たちが早期にICT施工に着手することは当然の流れでした」と、奥田社長は話す。

同社でのICT施工の導入は、ドローンによる空中写真測量を用いた出来形管理から始まった。従来は、測定基準にしたがって測定し図面に書かれている数値と比較するという、手間のかかる煩雑な作業を行う必要があった。それがドローン測定をすることで、スピーディーかつ楽になり、大きなコスト削減と短納期化を実現した。ICT施行の導入による高生産性を実感した同社は、ドローンによる3D測量、そして3D図面によるICT建機活用へと領域を広げていった。

効率的な河道掘削を実現

取材に訪れた20242月、同社では琵琶湖北湖に注ぐ一級河川野洲川の堤防強化工事を行っていた。河川の流れを妨げる堆積土砂を掘削して一旦仮置きし、河川の流れを整え、水が流れなくなったところに掘削した土砂を埋めていく。この河道掘削で活躍しているのが、機械を自動制御するマシンコントロール搭載の油圧ショベルPC200iとブルドーザーD61PXiだ。3D図面を読み込ませればバケットやブレードが自動的に正しい位置に設定され、正確な作業が可能に。丁張り設置の必要もなく、経験の浅いオペレーターでも熟練者同様に精度の高い業務が行えるようになった。

従来と比べて生産性と安全性が向上

「従来は、朝から夕方にかけて1日中、23人でひたすら丁張り設置をしていました。特に河川の場合は石が多くあるため、杭が刺さらないこともよくありました。その作業がなくなったのは本当に大きいです」と、執行役員土木事業本部本部長の山本明登氏は語る。また、土木事業本部工事部工事長の岡治俊幸氏は「これまで事務的な業務は、現場終了後に事務所に戻り、残業時間に処理するしかありませんでした。業務時間が短縮したことで有効活用できる新しい時間が生まれ、残業時間削減につながっています」と、ICT施工のメリットを説明する。また、従来は手元作業員として12名が建機周辺で作業を行っていた。工事現場には土砂を運搬するダンプカーが1日に延べ100台以上往来する。それぞれが高い安全意識で業務を行っているが、どうしても作業には危険が伴う。ところがICT施工を導入すれば手元作業員が必要ないため、安全性が大きく向上した。

株式会社三東工業社

執行役員 土木事業本部 本部長

山本明登 氏

株式会社三東工業社

土木事業本部 工事部 工事長

岡治俊幸 氏

専門部署設置でスムーズな導入が実現

同社ではICT業務を推進するうえで、効率的でスムーズな導入を図るために、専門の部署となる「システム管理室」を設けた。「社内の情報システムに関することはここで集中的に管理しています。さまざまな情報をタイムリーに収集して社内のシステムに活かすとともに、効率的な情報共有を行っています」と、管理本部システム管理室室長の松岡宏治氏は語る。図面の3D化を一手に引き受けているのが土木事業本部工務部ICT担当のホアン・トゥ・フエン氏だ。フエン氏はベトナムの国立ハノイ水利(トゥイロイ)大学で建設を学び、日本での就職を希望し、卒業とともに同社に大学新卒者として入社した。「大学で建設に関することを一通り学習しましたが、図面の3D化などICTに関することはほぼ日本で学びました。技術は日々進化しているので、常にアンテナを張って、最新の情報を吸収してスキルアップをしていきたいです。今後は、現場に出て経験値を高めたいです」と、フエン氏は展望を語る。

株式会社三東工業社

管理本部 システム管理室 室長

松岡宏治 氏

株式会社三東工業社

土木事業本部 工務部 ICT担当

ホアン・トゥ・フエン 氏

「インフラDX認定建設会社」に認定

同社のICT導入に対する取り組みが評価され、20233月に「インフラDX認定建設会社」に認定された。「これまでの実績や、ICT関連業務の内製化やパワードスーツによる現場支援など今後の計画が評価され、認定を受けることができました。これからも先進的な取り組みを行っていきたいです」と、松岡室長は語る。

技術を核に「三方よし」を実現

 

同社は自然環境の保全や地域社会への貢献にも熱心だ。建築分野でCLTの普及推進活動を行っている。CLTとはひき板(ラミナ)を繊維方向が層ごとに直角に交わるように貼り合わせた大判の直交集成板のことだ。

「私たちの核は技術にあります。優れた技術は、快適な業務環境、精度の高い業務、そして自然環境の保全につながります。つまり、近江商人の経営哲学「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)の考え方につながっているのです。今後も、ICTを中心とした先進技術を有効活用して、総合建設業の果たすべき役割を担っていきたいと考えています」と、奥田社長は語る。三東工業社はこれからも「技術を社会に笑顔をあなたに」届けていく。