技術、人、アプリの活用で、ICTの可能性を最大限に引き出す

地域に根付いた事業を展開する根本建設株式会社。成長のヒントはICTと人の組み合わせ。

総合力を強みに地域社会に貢献

福島県伊達郡桑折町に本社を構える根本建設株式会社。1970年に代表取締役会長の根本良久氏がブルドーザー1台で独立・起業。創業当時は圃場整備を主としていたが、徐々に事業を広げ、土木工事に留まらず運送や不動産などへと領域を拡大。現在では、それぞれが分社独立し、根本建設株式会社、藤本運輸株式会社、富士住宅株式会社、富士技研株式会社と4つの企業による根本建設グループを形成している。「地元の方に愛され地域に根付く企業を目指して事業展開しています」と代表取締役社長の根本幹夫氏は語る。
常務取締役の安彦隆生氏は「当社の強みは総合力を背景とした対応力です。大型建機や優れた人材を擁し、災害などの緊急時も素早く適切な対応ができる。地域のための活動を地道に重ね、地域社会との強固な信頼関係を築いています」と、自社の特徴を話す。

根本建設株式会社 代表取締役会長 根本良久氏

根本建設株式会社 代表取締役社長 根本幹夫氏

根本建設株式会社 常務取締役 安彦隆生氏

社会の流れをキャッチしてICTへシフト

同社が ICT 施工に積極的に取り組むようになったのは、元請け企業が ICT 施工へと舵を切ったことによる。当初はオペレーターのみの対応だったが、2018 年から自社でも ICT建機を導入し、トータルで対応できる環境を整えた。現在、油圧ショベルでは自動制御が可能なマシンコントロール搭載機、オペレーターへの情報提供が可能なマシンガイダンス搭載機(レトロフィット)、ブルドーザーではマシンコントロール搭載機を所有しており、コマツの建機の保有台数は全体で 120 台ほどに上る。
導入当初は機械の操作などに若干戸惑いがあったが、現在では ICT を使いこなし、最大のメリットである効率性を実感している。現場の 3D データを ICT 建機が読み込むことで丁張りが不要になり、これまで要していた時間と人員を削減。また、従来は 1、2 名の手元作業員が必要だったが、それも不要となった。「丁張りの設置がなくなり、業務が格段に効率的になりました。手元作業員がいないので、安全性も格段に上がりました」と、オペレーターの国分一美氏は語る。

人材の活性化と教育にもICTを活用

同社ではオペレーターの教育にもICTを役立てている。従来は先輩オペレーターからアドバイスをもらい、一つひとつ業務を覚えていたが、そのやり方では個人差が生じるなど、効果的な教育とはいえない部分もあった。ICTであれば、データを見て数値で正確に把握できるため、何をどのように改善すればいいのかが具体的に提示される。「若い人の多くは向上心がとても高く、自分のどこに問題があるのか、具体的に説明してほしいと考えています。ICTは、そんな若い人の思考にとてもフィットしていますね」と、現場を取り仕切る常務取締役の根本祐太氏は、若いオペレーターとICTの相性のよさを解説する。

(写真:根本建設株式会社 常務取締役 根本祐太氏)

アプリとの連動で過積載を防止

同社ではICTの推進にアプリを積極活用している。ダンプへの土砂の積み込みには、ペイロードメーターで油圧ショベルのバケットの重量を計測し、積載重量を管理するアプリ「Smart Construction Fleet」と連携させている。ダンプにはFleetデバイスが搭載されており、油圧ショベルのタブレット上にダンプごとの最大積載量やリアルタイムでの積載量が表示される。これにより、過積載の防止と、積載量の最適化による運搬効率の向上を実現する。「ペイロードメーターで土量を測りながら作業ができるので、ダンプの積載量に対して100%近くまで土砂を積み込むことができます。手間がかかり感覚によるところも多かった作業が、簡単かつ正確にでき、過積載の心配もなくなりました」と、オペレーターの伊藤洸貴氏は語る。

一元管理による効率的な進捗管理

元請け企業では、工事全体の施工進捗を管理するアプリ「Smart Construction Dashboard」を活用している。Smart Construction Dashboardでは、現場の情報をデジタル空間で再現し、現場の変化や推移情報を予想することができる。工事のすべての関係者が、どこからでもリアルタイムに情報共有可能。また、シミュレーションを通して正確な工事計画の立案ができ、計画どおりに進捗しているかどうかも把握。効率的な進捗管理ができる。

そのほかにも、3次元データを作成せずにICT施工ができる「クイックスマートコンストラクション」を活用するなど、さまざまな手法を用いて施工体制を構築、ICTの可能性を最大限に引き出し、効率的で高精度な業務を行っている。「ICTをベースに、状況によっては熟練オペレーターの高い技術に頼ります。ICTと人の技術を上手く組み合わせることが重要です」と、根本幹夫社長は語る。

ICTで地域貢献や人材の活性化を目指す

同社では、地域の活性化につながるさまざまな活動を行っている。小学生を対象とした現場の見学会もその一つだ。参加した児童は目を輝かせ、大きな建機に歓声をあげるという。また、採算が厳しく請け負う企業が少ない除雪業務にも積極的だ。

地域と良好な関係を結び、成長を続ける同社だが、人材の確保には苦戦している。「従業員は高齢化し、若い人のなり手は多くない。こういう状況でこそICTは有効です。通常10年かけてようやく一人前のところが、ICTを活用すれば12年である程度仕事がこなせるようになります。ICTを上手く活用して、人材の活性化にも役立てたいと思います」と、根本幹夫社長は語る。ICTによる生産性の向上、人材の育成、そして魅力的な企業づくり。ICTをいかに活用するか。そのヒントが根本建設の取り組みのなかにある。

Smart Construction Dashboardの活用で効率的な進捗管理が可能

ICT建機を活用し効率的な業務を行っているオペレーターの国分一美氏

ペイロードメーターを確認し効率的な積み込みを行うオペレーターの伊藤洸貴氏