農林水産省の「令和4年木材統計」によると、宮崎県のスギ素材(丸太)生産量は187万8,000㎥で、1991年以降32年連続で日本一。素材生産量においても全国第2位となっている。全国屈指の林業県である宮崎県に拠点を構え、地域のリーディングカンパニーとして活躍しているのが有限会社中石林業だ。1957年に創業し、1995年に有限会社を設立。そして、2023年4月、初代社長の中石健二氏が取締役会長に、中石啓太郎氏が代表取締役社長に就任した。立木を丸太に加工して製材工場に納入する素材生産事業をメインに展開している。
初めてコマツ製品を導入したのが2011年。その当時、プロセッサーを装着した他社製の建機を使用していたが、同業者からの薦めでハーベスターを装着したPC160LC-8を導入した。「評判がよかったので試しに入れてみるか、という感じで導入しましたが、当初はハーベスター部分の故障が多かったですね。それでもコマツはよく対応をしてくれました。あの対応があったからこそ、良好な関係が築けたと思っています」と、中石健二会長はコマツ製品初導入当時を振り返る。現在、同社で使用しているほぼすべての建機はコマツ製となっている。有限会社中石林業 取締役会長 中石健二 氏
有限会社中石林業 代表取締役 中石啓太郎 氏
コマツ製品が現場でどのように使われているかを説明しよう。路網整備を行い現場への作業道を整えているのが、フェラーバンチャーザウルスロボを装着したPC138US-10だ。そして、ハーベスターを装着したPC160LC-8が伐倒と玉切りを行い、玉切りされた丸太はグラップルを装着したPC120-8でフォワーダーに積み込まれ、木材の集積場となる土場へと運ばれる。土場で丸太を選別し、出荷用のトラックへ積み込みを行っているのが、グラップルを装着したPC170LC-11林業仕様機だ。この林業仕様機は同社の要望を受けてコマツが新たに開発した油圧ショベルで、国内1号機となる。
従来、同社では土場の選別・積み込み作業にはPC170LC-10を使用していたが、稼働時間が7,000時間を超えたため新たな建機の導入・更新を検討することになった。山側の法面が迫っており十分なスペースを確保できない土場では小回りが求められるが、PC120やPC138USといったクラスではパワーや作業範囲が物足りない。かといって、PC200クラスでは機体が大きくなり過ぎてしまい、旋回性が悪く効率が落ちてしまう。そこで、従来のPC170LCをベースとしながらも、林業特有の狭小な現場での効率性と安全性を高める仕様を施したのがPC170LC-11林業仕様機だ。
林業仕様機の最大の特徴は200㎜短縮された後端旋回半径だ。専用カウンターウエイトを新開発し建機後部を小さくすることに成功。従来2,545㎜だった後端旋回半径を2,345㎜へと短縮した。土場で選別作業を行っているオペレーターの中石あさみ氏は「これまでは、旋回時に保管している木材に当たってしまうことがよくあったのですが、それが見事に解消されました」と、小さい後端旋回半径のメリットを説明する。また、中石健二会長は「たかが200㎜、されど200㎜! この旋回半径の違いが業務の効率に大きく関わってきます。今後は更に後端旋回半径を小さくしたいですね」と“200㎜”に対する思いを語る。
SDGsや自然環境に対する社会の意識の高まりと連動して、林業は若い人の間で見直されてきており、志望者が増えている。全国有数の林業県である宮崎県では、未来のリーダーとなる人材育成を目的に「みやざき林業大学校」を2019年に開校した。同社も同校の理念に賛同し、就職ガイダンスに参加。積極的な採用活動を展開した。「林業に興味を示す若い人たちはYouTubeなどで動画を数多く閲覧していて、高い関心を持って最先端の建機をチェックしています。『機械の精巧さや先進性』といった業界の新しい魅力を提示することも重要です」と中石啓太郎社長は語る。また、林業ではまだ少数の女性として現場で活躍している中石あさみ氏は「大自然のなかで、大きい建機を動かすのはとても楽しいですね。余計なことは考えず、業務に没頭できます」と、林業の魅力を語る。
同社では「1本伐ったら、3本植える」をポリシーに業務を行っている。「伐ることで山が崩壊して、災害が起こるようでは意味がありません。伐ったら植える。それが自然環境と共生するこれからの林業のスタンスです。今後も自然とともに歩む林業を推進したいです」と、中石健二会長は抱負を語る。中石啓太郎社長は「入社して間もない若い人でも、あっという間にスキルを向上させ、建機を使いこなすようになります。若い世代の成長に、次世代の新しい林業の始まりを予感します」と、これからの林業に期待を寄せる。