カーテンレール方式で有線式電動油圧ショベルの可能性を拡大

林業を中心に事業展開する中川工業株式会社。施設の全電動化で循環型社会の実現に貢献。

環境保全への積極的な取り組み

中川工業株式会社は富山県上新川郡大山町(現富山市)にて1961年に創業、1986年に設立した。創業当初は森林伐採をメインに展開、その後地域社会に根差した企業として成長を続け、現在は伐採・索道工事などの林業を中心に一般土木業を主な事業として営んでいる。

環境保全にも積極的で、2003年には伐採枝などの木材をバイオマス発電の燃料として活用できる木質チップへと再資源化する、木質系の中間処理業に参入。2014年には業界に先駆け、自然環境への負荷が少ないハイブリッド油圧ショベルHB205-2を導入した。大切な資源である木材の有効活用など、企業活動を通して循環型社会の実現に貢献している。

環境負荷を軽減する施設の全電動化

木質チップを製造しているのが木材の破砕施設だ。近隣の業者や自社の現場から搬入された伐採枝などの木材を破砕機へと投入し、木質チップが完成する。同社では 2021 年の 富山県 SDGs 宣言において、「すべての作業機械を『排出ガス』『低騒音』対策が標準装備されたものとし、破砕機の燃料を軽油から電気に移行し、クリーン&エコノミーを実践す る」ことを宣言。これを実現すべく、2023 年に同施設の破砕機と破砕機への木材投入用機械となる油圧ショベルも電動化した。これにより、破砕工程における施設の全電動化が実 現。投入機に採用されたのが、コマツの有線式電動油圧ショベル PC138USE-11 だ。

有線式の弱点をカーテンレールで解決

同施設において、投入機は破砕機に木材を投入するだけでなく、木材の施設内の移動や積み込みにも活用するため、PC138USE-11 の稼働範囲を広くする必要があった。多岐にわたる方法が検討された結果、電源ケーブルを 30m の長さとし、上からケーブルをレール状に吊るすカーテンレール方式が採用された。これにより、有線式ではあるものの広範囲でのスムーズな稼働を可能とした。カーテンレール方式の導入に当たっては、効率性と安全性を確保するためにさまざまな工夫が施された。
建機が 360 度以上旋回してしまうと電源ケーブルにねじれが生じ、建機の稼働を妨げるなど事故の原因となる可能性があるため、旋回角度が一定の範囲を超えるとブザーが鳴り、オペレーターに注意を喚起する仕様とした。そして、操作中もケーブルの位置がわかるように、本体の後方部にカメラを設置。運転席のモニターでケーブルに注意しながら安全に作業が行える。さらに、電源ケーブルと本体との接合部にショックをやわらげるためのバネを取り付け、建機のスピーディーな動きに電源ケーブルがスムーズに追従できる設計とした。
雨などの悪天候でも稼働が可能な有線式電動油圧ショベルを用いた屋外施設

電気自動車のような静かさ

「PC138USE-11の導入に際しては、コマツと綿密な打ち合わせを繰り返し、いろいろ提案してもらいました。さまざまな条件をコマツに提示しましたが、安全性を確保したうえでほぼ理想的な業務環境が構築でき、とても満足しています。とはいえ、改善すべきポイントもいくつかありますので、これからも検証を続け、更なる改良を重ねていきたいと考えています」と、代表取締役社長の中川一郎氏は語る。また、油圧ショベルが電動式に替わったことは、作業面においても大きなメリットをもたらしている。「本当に静か。電気自動車を運転している感覚ですね。特に、近隣の住民の方に迷惑がかからないように、騒音に関しては気を遣っていたので、電動式にしてよかったです。その反面、静か過ぎて建機が稼働しているのかどうかがわかりづらいので、安全面には十分に注意しています」と、中川社長は電動式のメリットを説明する。オペレーターの中山大樹氏は「振動は少ないですし、排出ガスの心配もありません。エンジン駆動式と比べるとオペレーターの体への負担は格段に減りました。パワーも申し分なく、業務効率が向上しました。メンテナンスも機体に付いたチップなどをブロアーで除去するくらいで完了します。充電の心配もありませんし、業務自体が楽になりました」と業務環境の改善について話す。

中川工業株式会社 代表取締役社長 中川一郎 氏

中川工業株式会社 オペレーター 中山大樹 氏

コマツへの揺るぎない信頼

もちろん、コマツの建機は破砕施設のPC138USE-11だけでなく、伐倒・集積を行うフェラーバンチャーやハーベスターを装備したPC138US-11、グラップルバケットを装備したPC78US-10などが、危険を伴う林業の現場で、優れた効率性と安全性を発揮している。「コマツの建機は使いやすくて、安全性に優れています。林業の現場は危険が多いので、コマツの建機にはとても助けられています。」と、中川社長はコマツに対する信頼を語る。

ハーベスターで丸太を切り分ける玉切り作業を行うPC138US-11

フェラーバンチャーで斜面の立木の伐倒作業を行うPC138US-11

機械は重要だが基本は「人」

自然環境に対する社会的な意識の高まりとともに、林業は見直される方向へと進んでいるが、従事者の数は長期的には減少傾向にあり、機械化を推進することで人材不足を補っているのが現状だ。「機械はとても重要ですが、それでもやっぱり基本は『人』なんです。人が自然と向き合い、責任を持って業務を行う。あくまでも、機械はそのサポート役でしかありません。人を入れて人を育てることが最重要課題です。人がよい仕事をしないと、生産性は高くなりませんし、安全性も確保できません」と、中川社長は「人」の重要性を説明する。

「伐採する一方で植林し、循環型社会の実現に大きく貢献できるのが林業です。山を相手に仕事をすることは大変有意義なことです。山で仕事ができることを、山の神様に感謝しています」と、中川社長は「国土を守ることが林業の使命である」という強い信念のもと、林業の可能性と山に対する畏敬の念を語る。

お客様プロフィール

<設立>
昭和61年12月

<事業所>
〒930-1281 富山県富山市東福沢726

<事業内容>
  • 伐採業
  • 産業廃棄物処分業
  • 産業廃棄物集収運搬業
  • 一般土木業(電力土木・ヘリ作業)
  • 木材買取販売
  • 木質チップ販売
  • 薪販売
  • 索道工事

HP http://0764831985.com/index.html