3次元設計データを読み込ませたICT建機の導入で日没後の法面整形を可能に

株式会社熊野組

土木部主任 鍋島保徳殿 

ICT建機の高い施工精度が、エクステンションアームによる法面整形を実現

「ICT建機導入当初は、不安感から従来通り丁張りを掛け現場管理に臨んだ」と語る㈱熊野組土木部の鍋島保徳工事主任。運用経験を重ねるに従いICT建機ならびにスマートコンストラクション(以下・スマコン)に当初抱いていた不安感は薄れ、期待感は確信へと変化していったという。
新たな現場管理システムを活用した試験的な工法にも積極的に挑戦する鍋島工事主任に、ICT建機、スマコン導入後の成果、仕事の在り方について語ってもらった。

「ICT建機の導入は3年前の大浜上流地区堤防整備工事が最初で、この現場で菊池川河川事務所の優良施工工事表彰を頂きました。」と話す鍋島工事主任。この工事で同社は、生産性を上げるため通常数度に分けて行う法面整形作業を、エクステンションアームを使うことで大幅な工期短縮に成功した。「法面整形は特に慎重で丁寧な作業が求められる工事ですが、工期に余裕がなかったこともあり、ICT建機にエクステンションアームを取り付け法面整形を試みました。

通常何度かに分けて行う作業を一度に整形するのは、従来の丁張を目視しながらの作業では工期に間に合わせるのは難しかったと思います。高い施工精度を持つICT建機だから可能だったと思います。完成した法面も申し分のないできでした。」と当時を振り返る。同社では後に、切土作業でのエクステンションアームによる法面整形も試み見事に成功させている。

(写真:今回インタビューにお答えいただいた鍋島保徳土木部主任)

導入するも不安感から従来通りの丁張りを

多くの土木現場で、今後ICT建機が普及していくと考え導入に前向きだった鍋島工事主任も、当初はスマコンのシステムを全面的に信用することに不安があったという。「最初の現場では分からないことだらけで、しょっちゅうコマツさんに連絡を入れていましたね。万が一のことを考え従来通り丁張を設置していました。一度経験してみない事には施工が無事に進んでいくのか、不安を拭えなかったのが一番の理由です。

施工中、衛星の捕捉が不安定な時間帯があったのでヒヤッとしたことがありました。もしこのままICT建機が使えなかったらと思うと、その時は正直不安になりましたね。ただ常にコマツさんからのサポートが受けられる安心感があったので、慌てずにすみました。」

スマコン導入については、社内でもその効果に懐疑的な態度を示す社員も少なくなかったという。「これまでにない新たな仕組みは誰にとっても不安を感じるものだと思います。知識として分かっていても、実際に使わなければその効果を実感できません。現場では役立つかもしれないが、却って手続き上の書類が増えることになるのではと不安視する年配社員も結構いました。」と導入当初を振り返る。

(写真:PC200iにエクステンションアームを取り付け法面整形)

目視だけに頼らない法面整形で日没後も作業が可能に

工期に余裕のない現場を任されたとき、改めてICT建機の性能の高さを実感したと語る鍋島工事主任。ICT建機ならびにスマコンの運用経験を重ねるに従い、当初の期待が確信へと変化していったという。

「法面の整形作業は暗くなると正確な施工が難しいことから、日中の明るいうちにしかできません。暗くなって照明で現場を明るくしても、強く影を打つため法面表面の微妙な凹凸を把握することができないからです。そのため1日で施工できる作業量は自ずと限界があります。ただコマツのICT建機なら、3次元データを基に作業機をコントロールできるので、目視だけに頼ることなく朝も暗いうちから日暮れすぎまで作業が可能です。以前は工期に間に合わせるのはとても無理だと感じていた工事でも対応できるようになりました。」と話す。

(写真:切土作業でも高い施工精度を持つICT建機)

さらに、「今までは検査時に工事概要を説明する資料に手間が掛かっていたが、スマコンアプリで3次元設計データやICT建機の施工履歴データ等が活用できるので、資料作りの時間が削減できた。」とスマコン導入の成果を語る。

導入後、業界を目指す若者ならびに、一般への理解を深めてもらう目的で開いた現場見学会の後、19歳の若者が入社してきたことに触れ「ICT建機といった先端技術が活用されている建設現場の実態を知ってもらうことは、3K職種と呼ばれてきた業界のイメージアップにもつながるのでは。」と、採用面の効果にも期待を寄せる。

現場管理の新たな手法を模索

鍋島工事主任は、ICT建機をはじめとするスマコンの導入は、土木の現場にこれまでにない大きな可能性をもたらすとしながらも、これまで業界で培ってきた技術の大切さも強調する。「ICT建機は確かに現場を大きく変える技術であることは間違いないものの、仕事の基本はしっかり理解する必要があると考えています。基本的な理屈が理解できていなければ、先進的な新しいツールも上手く使いこなすことが難しいと感じています。またそうした便利さに頼り切ってしまうことは、想定外の状況への対応力の低下を招きかねない。」と話す。

今後ICT建機を活用する上での取り組みについて「現場規模に合わせた重機の使い分けなど、効果的な運用方法を探っていくことが大切。ICT建機を使う中で、現場の状態に合わせた運用方法の蓄積が必要ですね。どう使いこなすかについては、やはり利用する現場管理者の経験値やノウハウに負う部分が大きいと言えます。情報化技術を駆使した、新たな現場管理の手法を模索していきたいですね。」と語った。

(写真:施工進捗管理・資料作成に大活躍したスマコンアプリ)

お客様プロフィール

株式会社 熊野組

<事業内容>
■建設・土木・リフォーム
    総合工事(一般土木建築・土木) / 建築
HP:http://www.kumanogumi.co.jp/


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