重機の導入が入所者のやる気、チャレンジする気持ちを引き出してくれた

社会福祉法人 白鳩会 

課長 横峯 浩文 様     係長 久保 豊和 様

障がい者の自立支援目的に農場経営に着手

心地よい潮風と南国の太陽が降り注ぐ南大隅地区で、障がい者の自立支援を目指し農畜産事業を運営する社会福祉法人白鳩会(鹿児島県肝属郡南大隅町根占川北、中村隆重理事長)。同法人が運営する花の木農場では現在、入所者約245人、職員150人が共に力を合わせ、畜産、お茶、にんにくなどの農作物の生産加工に汗を流す。入所者の高齢化にともない作業負担の軽減を図るため、同農場では順次作業用重機を導入。

作業の省力化、合理化の実現に加え、機械操作の経験が入所者のモチベーションを高めることにも役立っているという。

花の木農場では、入所する障がい者と職員が家族的な雰囲気の中、お茶、ニンニク、養豚などの生産活動に日々汗を流す。同農場の責任者を務める社会福祉法人白鳩会の横峯浩文課長は「自立支援のためには、障がい者にも働く場が必要と考えた時、中村理事長が手掛けた農福連携でした。南大隅町は鹿児島県内でも過疎化率上位の自治体で、地元に働く場が限られているため、入所者へ給料を払える仕事としては農業しかないと考え、農場経営をスタートしたのが今から40年程前です。福祉事業に生産活動としての農業を加えたいわゆる農福連携を実践しているのが、当法人の特徴といえます」と農場経営に至った経緯を語った。

(写真:今回取材に応じて頂いた社会福祉法人白鳩会の横峯浩文課長(写真左)と久保豊和係長)

入所者にできるだけ高い賃金を払えるようにと、同法人では効率的な収益事業の運営に取り組み、現在では農場で生産された新鮮な農畜産物を使ったメニューを提供する農場直営のレストランやカフェの運営、自社ブランド品の拡販にも力を注ぐ。
「この場所は、以前は一面の桑畑でした。ここに農場を開くにあたり、圃場の整備から始め、その後施設や建物を建設し現在のような施設になりました。国内では北海道で大規模に展開している農福連携の事業所がありますが、全国的には同様の施設は少ないですね。鹿児島県内ではここと同規模の施設は他にありません」。

花の木農場が特に力を入れているのが、お茶、養豚、ニンニクといった需要の高い農畜産物で、肥育用の子豚の生産は年間約2000頭、お茶は農場内に約7町分の圃場を整備し、大隅茶のブランドで出荷している。このほかにも牛32頭、米、水耕野菜、イチゴ、ミニトマトなど生産品目は多岐にわたる。最近では耕作放棄地を借りるなど、一層の生産拡大にも力を入れている。

作業の合理化・効率化目的に重機を導入

生産品目が多岐にわたることから、作業の合理化・効率化が大きな課題となっていた同農場では、約20年程前から重機の導入をスタートした。「利用者の仕事を減らすことになるのではとの考えから当初導入には慎重でした」と当時を振り返る。
しかし入所者の高齢化による作業負担の軽減策として、次第に重機利用へとシフトしていったという。「最初は人力と機械の組み合わせで作業をこなしていました。入所者に機械を操作させることに不安はありましたが、実際使ってみると個人差はあるものの、機械に非常に興味を持つようになり、それをきっかけに作業にも積極的になる入所者が増えました。現在入所者の平均年齢が46歳ぐらいで、これから働ける人手もどんどん減っていきます。入所者の高齢化に加え、職員不足を補うためにもさらに機械化を進めていく必要があると考えています。

(写真:農場内には約7町歩の圃場を整備し、大隅茶ブランドの茶葉を生産している。写真は花の木農場内の茶畑の風景)

養豚作業にコマツ製ホイールローダーがフル稼働

現在同農場では養豚のための堆肥処理と子豚の出荷作業にコマツ製ホイールローダーを使用している。出荷の際はホイールローダーのバケット部分をパレット運搬用のアタッチメントに取り換え、豚を囲うゲージを固定したパレットごと持ち上げトラックに積み込んでいる。アタッチメントは数分で取り換えが可能なため、豚の出荷作業の手間も大幅に簡略化し、作業がスピードアップしたという。豚舎は農場のあちこちに分散しているため、小回りの効くホイールローダーは各豚舎の目の前に付けて作業ができることからほぼ毎日使用しており、年間稼働率も500時間に及ぶという。

(写真:狭い堆肥置き場でも、小回りの効く機動性を活かしキビキビと堆肥の切り返し作業をこなすコマツ製ホイールローダー。子豚の出荷作業の際は、先端のバケット部分を専用のアタッチメントに取り換え、子豚を囲うゲージを固定したパレットごとトラックに積み込む。使い勝手の良さから年間稼働率は500時間に及ぶ。)

重機導入が入所者のやる気やチャレンジする気持ちを引き出してくれた

「入所者にとっては、最初は難しいと思えた作業も、機械操作に慣れるに従い次第に上手くなり、しかも作業にやる気がでてきたのはうれしい誤算でした。機械好きの入所者もいるので、その効果は絶大ですね。刈り払い機を使って1日で10mほどしか草刈り作業ができなかった入所者が、今では重機の運転までこなせるようになるなど、本人の意欲の向上にもつながっていると感じています」と重機導入の成果を語る久保 豊和係長。
同農場の取り組みは、白鳩会が掲げる職員と利用者が共に汗を流し共に育つ「共汗・共育」の精神の顕れであると同時に、障がい者自立支援の新たな可能性をも感じさせてくれる。

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<事業内容>
■障がい者支援施設
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HP:https://shirahatokai.jp/


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